北海道警裏金問題を書いた書籍で名誉を傷つけられたとして、元道警総務部長が北海道新聞社、同社記者2人、出版社に損害賠償を求めた裁判の控訴審判決が10月26日に札幌高裁であり、72万円の支払いを命ずる判決が下った▼そもそもこの裁判自体が奇妙で、原告は警備公安畑出身のノンキャリア。地元警官として最高ポストに登りつめ権力中枢にいた人物が、現職時代に道議会で裏金問題がとりあげられないよう裏工作をしたことが外に漏れ「本部長から叱責されたらしい」と記述されたことをもって、退職してから一市民が報道被害を受けたかのように騒いだのがこの裁判だ。個人として裁判を起こしたと言うが誰も信じる者はいない。道警が背後にいると考えるのが普通だ▼被告側は「裏金の隠蔽工作がうまくいかず叱責されたことがなぜ名誉毀損になるのか。評価を高めるものではないのか」と主張し、取材も充分していると反論したが、札幌高裁は名誉毀損を認め、「裏付けを取ったとの記者の主張は不自然」と被告の主張を切り捨てている。被告の高田昌幸記者は判決後の会見で、「名誉棄損に対するハードルが一段と下がっている。このままに置くことは報道の自由への影響が大きいので上告する」と述べた。翌27日の「高知新聞」は判決について、「権力の不正を暴く調査報道を萎縮させるもの」との論陣をはったが、全国的にこのような観点で報じたメディアは皆無といえる。報道の自由にかかわる重大な問題が含まれる判決であるにもかかわらず▼高田記者は高知市出身、高知追手前高校OBである。道警の不正を暴いた彼らの仕事ぶりは同じ高知県人として誇らしい。今後の裁判には厳しさもあるが、関心をもって見守っていきたい。(ひ)(2010年11月7日 高知民報)
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