2010年10月17日

視界不良 銀座アンテナショップ 来店者数が大幅減 9月以降物販苦戦 地産外商公社「これからが正念場」
中央区銀座1丁目「まるごと高知」 看板がわかりにくいという指摘も多い
尾崎高知県政が「地産外商戦略」の拠点として家賃、改装費など5年間で6億円以上の県費を投入し東京銀座1丁目に開店したアンテナショップ「まるごと高知」がオープンから2カ月をむかえようとしていますが、9月に入って物販の売り上げが低迷するなど厳しい状況があきらかになり、関係者からは「到底5年ももたない」という声が聞かれるなど先行きに不透明感が増しています。

8月21日の開店直後は客が殺到し、長時間行列ができるなど、大盛況ぶりが大きく報じられました。ところが9月になり状況は一変。開店直後の「バブル」は雲散霧消し、週単位で集計すると、早くも物販部門で「ノルマ」(※)を達成できない週が連続する右肩下がりの様相を呈しています。

苦戦の理由について濱渦達也・県地産外商公社事務局長は「9月になってしんどいというのはその通り。雨が多かったこともあるが、高知に関心のある人が一回りしたということではないか。これからが正念場」。

「まるごと高知」の1日あたりの売り上げ額の目標は、店舗全体で113万6000円、うち物販(一階と地下)81万2000円、二階のレストラン32万4000円。レストラン部門はこれまで一度も目標を下回っておらず、予想以上に健闘していますが、問題は物販。9月後半からノルマをクリアできない週が連続し、月末には60万円台まで落ち込むなど、非常に厳しい状況です。

要因は来店者数の減少。9月第3週目以降は1日あたりの来店目標数である2655人を大きく下回り、9月30日には雨と言うこともあり981人に。開店以来初めて1000人を割り込みました。

物販の売り上げベスト3は、@ぼうしパン(168円)、A巾着塩けんぴ(367円)、Bごっくん馬路村(120円)。いずれも単価が低く、来客数が大きく伸びなければ売り上げを回復させることは容易ではありません。

岩城孝章・県産業振興推進部長は「9月はどこの商売も悪い時期。これからは文旦や新高梨などのセット販売、お歳暮など単価の高いものを販売していく。手応えも感じており、年間延べれば目標は達成できると考えている」と話しています。

※ショップを経営する県地産外商公社が商品の仕入れ、人件費などを支払ったうえで家賃の負担分として県に年間3100万円を上納するために必要な最低限のライン。達成できなかった分は税金で穴埋めされることになる。

解説 県丸抱えのアンテナショップ銀座出店は、尾崎知事の肝煎りですすめられた施策でしたが、店の立地の悪さもあり経営の厳しさは当初から予想されていました。開店2カ月が経過してその懸念が現実のものになりつつあるのが実態です。

県議会で出店に賛成してきた自民党などの会派も一定の距離をおきはじめており、「何としても来年12月までは格好をつけなくては」と次期知事選にむけて問題を糊塗する動きが見うけられるほど。6億円以上もの県費を投入し、むこう5年間は撤退することも許されない銀座アンテナショップ。県政へのダメージはボディブローのように徐々にひろがっています。

県行政が日々の売り上げに一喜一憂するような構図自体が、県行政のあり方からの逸脱。県は民間業者や市町村の支援に徹するべきだという声への回答は依然残されたままです。(N)(10月17日 高知民報)