2010年10月10日

「本物に接する観光行政を」 共産緑心・米田稔議員の質問 9月県議会

米田稔議員
10月1日の県議会9月定例会本会議で日本共産党と緑心会の米田稔議員が行った質問と執行部答弁の要旨を紹介します。米田議員はこの他、県立大法人化、国保広域化、介護保険、教職員定数について質問しました。

龍馬ふるさと博

米田議員 今回の観光客数の増大は大河ドラマ効果、「福山雅治効果」によるところが大であり一過性もやむを得ないが、激動の時代の坂本龍馬の生き方に共感が広がっていることも確かだ。龍馬記念館の充実や桂浜公園整備など本物の龍馬に接近してもらえる事を検討し、高知にしかない歴史と文化、自然を生かすことを観光政策の基本にすべき。

しかし、県はまたまた龍馬の名前をつけたイベントを繰り返し、偽物の龍馬の生家を再現する計画。あまりにも底が浅い。7500万円もする生家セットは、所詮テレビドラマで使ったにすぎない。セットは廃棄処分するものだが、金額の根拠の説明を求める。目的も効果も定かでなく、一旦白紙に戻して再検討すべきだ。

尾崎正直県知事 大河ドラマの終了で露出が一気に減少する中、引き続き誘客を促すため龍馬ブームが続
尾崎正直高知県知事
いているうちに新しい話題を提供することが大切。ドラマのセットの中に実際に入れることは強力なコンテンツになる。

セットのうち、使い回しができないものはNHKの配慮で無償で譲ってくれた。柱・障子・畳など何度も使い回すものは適正な対価を払う必要がある。セットは極めて簡易な構造なので基礎や補強工事をしなければならず、さらに映像制作、音響映像機器設置、土佐の偉人を紹介する展示の制作費、著作権処理費などソフト経費も含んだものをNHKエンタープライズと契約する。現在の「ろまん社中」の展示費用は1億2000万円であり高くない。

森林環境税の使途

米田議員 森林環境税の使い道を審議する保全基金運営委員会は県立安芸病院木質化に23年度約5千万円、24年度4500万円を特例として補助する県の提案を承認したが、県民から批判の声があがっている。県立安芸病院の木質化を含む整備は当然県の一般財源で対応すべき。たまたま基金が残っているからと限定で整備するのは環境税の趣旨から著しく逸脱している。

今年5月国会で超党派で「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が制定され10月1日から施行される。今回のようなケースは国に一定の支援を求め、不足分は県の一般財源を充当すべきだ。

中山間地域の鳥獣被害はますます深刻で、放置すれば人が住めなくなる状況。ネット等防護措置や駆除対策の拡充が必要。県下全地域で見回り隊編成や捕獲員配置など地域の雇用にもつながる事業に使うべきだ。間伐が進んでいるとはいえ、放置されている山林は多く残っており作業道や林道整備は課題が山積している。働く場の確保や所得増大で中山間地域に活力が生まれる対策が急がれる。

来年度の国の概算要求で間伐の補助対象が集約化、搬出間伐に限定する方向が出るなど国の動向を注視する必要があり、基金残高約1億8千万円は当面留保すべきだ。

臼井裕昭林業振興・環境部長 森林環境税は森林整備を中心に、木材利用促進も使い道として拡充され、県立安芸病院の木質化はこの方向に沿うもの。運営委員会で2回、慎重な審議をいただき、整備事業費の二分の一にあたる9600万円を上限に支援することが全会一致で承認された。

国の23年度概算要求には新法の支援策もあるが、現時点で詳細不明。国の支援策を優先するので、国の動向を注視し、利用可能な制度は積極的に活用する。シカの駆除対策は、これまでも森林環境税の活用を提案し運営委員会で審議したが実現していない。シカ被害は森林環境保全にとって大きな問題なので活用をさらに検討する。

米田議員 国の制度を優先するということは結論が出るまで実質留保と理解していいのか。運営委員会が結論を出す前に県が、「これはすでに県が決めたことだから、協力お願いしますよ」と話をしたと聞くが事実か。こんなやり方で県民参加の県政といえるか。

臼井部長 予算計上する段階になったら、国費が使える部分がないのか十分に庁内で検討し、国費活用を積極的に考えたい。(事前に)趣旨の説明はしたが、そういった話をしたかどうか承知していない。

一体的図書館整備

米田議員 今回の計画の最大の問題は実務者協議を無視し、関係者や利用者の声を聞かず、行政担当者が財政問題、東西軸活性化を主眼に議論して追手前小学校跡地に「一体的整備」を打ち出したこと。本来、県立図書館が果たすべき機能より場所ありき、一体的整備ありきで、敷地内にどう納めるかの議論になっていることは否めない。

図書館は国民の「知る自由」を保障し、基本的人権の保障の実現を支える施設。民主主義の砦と称される図書館建設は県民・市民の「知る自由」を保障する観点から、もっとも民主的な手続きで県民・市民の総意で進められるべきものだ。「一体型図書館」構想は手続き、住民参加の点で重大な問題点があるが、内容にも大きな問題がある。全国的に新しい図書館ができたところでは利用者が5倍など激増している。新図書館の利用者数の想定を問う。

中沢卓史県教育長 現在の2、3倍になる。
中沢卓史県教育長

米田議員 県立図書館の第一の役割は市町村図書館支援。大きな書庫が不可欠だが収蔵能力は県立115万冊。30年間を見込んだというが、雑誌が除かれ、年間1万冊をこえる政府系研究所寄贈書籍も反映しておらず20年もたないとの指摘がある。すぐに書庫増設が迫られ「経費削減」に逆行する。

県教育長 先行県と比較すると余裕があり、雑誌や寄贈図書にも対応できる。収蔵計画は妥当。

米田議員 利用者増を考えれば、閲覧スペース確保は極めて重要だ。閲覧スペースの想定面積はいくらか。伸床13000平方メートルで205万冊の蔵書は他県と比べて無理がある。スライド式の集密書庫を多用すれば効率が大きく落ち、多くの人の配置が必要となる。自動書庫なら経費がかかる。どのような方式を想定しているのか。

県教育長 ワンフロアないしツーフロア3300平方メートルに28万冊の開架図書を確保し、管理スペースを加え4100平方メートル。現在の両館の開架スペースの2倍弱。書庫は積層式と集密式を半分ずつで試算している。自動書庫は想定していない。

米田議員 駐車スペースの確保は県立図書館としての役割を果たすうえで必須。鳥取県立図書館は300台の駐車場でも土日は不足している。追手前小跡地ではスペース確保は不可能で、立体駐車場にすれば、費用がかかるし、日曜市やひろめ市場と隣接しており土日の混雑は必至だ。

県教育長 日曜日の車や歩行者の動線、近くの有料駐車場利用も含め検討して混雑を緩和する。

米田議員 トップダウンの「県市一体型ありき」でなく、民主主義的な議論で、それぞれ整備することが県民、市民の願いに応える道。白紙にもどし、改めて県民・市民の声に耳を傾けるべきだ。建物の底地面積、跡地はすべて図書館用地なのか、何階建か。運営費で1億1000万円の削減効果があるというが、人員は増やさなければならない。きわめてあいまいだ。

県教育長 図書館だけで4階建。底地は3250平方メートル。付加機能を加え5階建をイメージしている。敷地全部を使うことは考えてない。運営費は情報化で効率化して、人をあまり増やさないようにするが、来客がどれだけ増えるのか予想できない。

米田議員 運営費の削減分を図書購入に使うと言うが、結局は知事の姿勢。鳥取県は知事の肝煎りで人口60万人で年間1億円になった。削減できるかどうか分からないものでしか図書購入ができないという言い方はごまかし。運営体制では指定管理者や民間委託につながる可能性があるのではないか。

県教育長 図書を購入する時に浮いた財源があれば充実がより担保される。県立図書館は読書環境の整備という政策的な動きをするので、指定管理者はふさわしくない。(10月10日 高知民報)