2010年10月10日

拙速な合築ありき禍根残す 共産・江口議員が討論 新風・和田議員「反対のための反対理解できぬ」 高知市議会

江口善子議員
9月28日の高知市議会最終日、江口善子議員(日本共産党)が行った県・高知市合築図書館関連予算などに反対する討論、新風クラブの和田勝美議員の賛成討論要旨を紹介します。

江口議員の討論要旨

なぜ今、突然「県市図書館の合築」がトップダウンで出てきたのか。「図書館の自由に関する宣言」は、日本図書館協会が1954年に採択し、1979年に改訂され日本図書館協会の総会で決議されたもの。

ここに掲げる「図書館の自由」の原則は、「国民の知る自由」を保障することこそが図書館の責務と規定し、「図書館の自由の状況は、一国の民主主義の進展を図る重要な指標である」と強調している。 民主主義の砦とも評される図書館の建設については県民・市民の「知る自由」をどう保障するのかという観点から、最も民主的な手続きで県民・市民の総意で進められるべきものだ。

ところが今回、県市トップ会談で追手前小学校跡地に県市一体型図書館の合意がなされ、わずか5カ月で、今後50年使用する図書館のあり方が決められようとしていることは、図書館のあり方とは相容れない暴挙だ。

今回の内容は、これまで県市でそれぞれ検討された内容とも大きく異なる。 昨年8月に出された「高知県の図書館行政のあり方提言」は、開架図書20万冊、収蔵能力150万冊、延べ床面積14400uの県立図書館が提言されている。

2002年に出された「新しい時代の市民図書館構想」は、開架図書18万冊、収蔵能力200万冊、延べ床面積9900uの市民図書館を構想している。高知市新図書館構想検討委員会は、平成12年6月に設置され約2年間かけ、10回の委員会と12カ所の視察を行い検討している。2年かけて調査し、議論したまとめを全く無視した今回のトップダウンの進め方は民主的ではない。

実務レベル、県民レベルの検討もなく、「合併特例債ありき」、県市トップによる「追手前小学校跡地」、「県市一体型」ありきの構想は、手続きだけでなく、内容も重大な問題点を含んでいる。合築により市民に危惧される点を指摘する。

■市民サービス 一体化により新図書館の利用対象者は、市民図書館の分館・分室を含め全県民となる。高知市以外の市町村は各自治体の図書館と県市新図書館のサービスを両方を受けることができるが、高知市民は新図書館のみになる。市民図書館は、新刊は6カ月は他自治体に貸し出していないが、県立図書館は新刊から貸し出している。市民図書館の新刊を全県から予約できることになれば、高知市民のサービスは低下する。 今でも数カ月から1年待ちになることがあるが、これが2年待ちになる可能性がある。

■システム統合 1冊あたり100項目に及ぶ図書目録データー統合とメーカー統一、市はNECで県は富士通というコンピューターの統合、図書分類方式の統合、利用者データーの名寄せ作業など膨大な時間と費用が予想される。 とりわけ郷土資料は図書館が独自に分類しており、まとめる際には現物にあたって確認する作業が生じる可能性がある。専門知識を持つ職員による膨大な業務量をともなうことになる。システム統合に約4億円との試算が出されているが、それで収まるのか、根拠は明らかでない。

■経費削減 単独整備より22億円削減になるというが表面の数字で、合併特例債や地方債を使うため実際の削減効果はもっと少ない。運営費も新図書館になった場合の利用者増の見通しが示されておらず、根拠があいまい。人的経費削減は若者の安定した雇用の場をなくす負の側面もあり、専門的知識をもった職員を確保することは県民・市民の財産であってコスト論だけで考えるべきではない。本会議で「分業して、民間委託を考えている」旨の答弁があったが、図書館の民間委託についてはすべきではない。

■駐車スペース 県立図書館は、公共交通の不便な郡部から車で利用することへの対応、障害者利用への対応が不可欠。 また県立は館内閲覧に限定されているものも多く、調査研究による長時間滞在者が多い。利用者だけでなく移動図書館、市町村支援の配送スペースも必要だ。鳥取県立図書館は300台の駐車場を持っていても、それでも土日には不足していると聞く。追手前小学校跡地では、このスペースを確保できない。

「高知市民図書館」は「市の図書館」ではなく、「市民の図書館」だ。これまでの「市民の図書館」の歴史を引き継ぎ、発展させる方向で整備されなければならない。 県民・市民の「知る自由」を保障する施設として、県民・市民の手による民主主義的な議論で整備することが、県民・市民の願いに応える道だ。よって「県市一体型・合築」ありきの構想検討委員会設置予算には反対する。

和田勝美議員(写真)の討論要旨

理由を縷々あげているが、反対のための反対であり、財源問題も含めて無責任だ。これから意見を聞いていくための予算のスタートの段階で反対するということは、結局市民図書館整備そのものを否定するものであり理解できない。

今後、県市合同で検討委員会を立ち上げ、課題の検証などを専門家や有識者の意見をいただき、県民市民の意見を聞くとされているので、合併特例債の期限を考慮すると、まずスタートすることが肝要だ。

(2010年10月10日 高知民報)