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第2回森林環境保全基金運営委員会(9月17日、高知城ホール) |
県が年500円を県民税に上乗せして徴収している森林環境税の使途やあり方について学識経験者や民間委員が審議する「第2回森林環境保全基金運営委員会」(根小田渡委員長)が9月17日に高知市内で開かれ、新しく建設される安芸地域県立病院(平成24年から順次開院予定)の「木質化」経費として約9600万円を森林環境税を積み立てた基金から「補助」することを承認しました。審議過程で出された「金額は妥当か」、「税の目的に合致するのか」などの疑問は、何としても支出したい林業振興環境部の意向をくむ形で押し切られましたが、森林保全という目的を持って徴収している税を、県事業の財源に使い回す「お手盛り」的な手法には波紋が広がりそうです。
同病院の「木質化」とは手摺、腰壁、建具、床材、外装ルーバー、家具、病棟収納、受付カウンターなどに県産材を用い、ペレットボイラーを設置するもので約1億9000万円を要するとされています。
8月24日に開かれた第1回運営委員会では1億4500万円を基金から支出することが提案されたものの、「額が大きい」、「唐突」などの意見が委員から出されたため、9月17日の委員会では補助額が9600万円に減額されて提案されましたが、「構わない範囲で補助していただければありがたい」(原哲・県立病院課企画監)というように金額の根拠はあいまいなままでした。
公共的な建築物を積極的に木造化・木質化して県産材を活用することは当然であっても、県が費用負担に責任を負う県立病院の建設費に森林環境税から「補助」するというのでは、県内部の財源付け替えに過ぎず、県産材の利用が県全体に広がっていくことにはつながりません。
同税を財源に事業化されている市町村や民間を対象に公共的空間の木質化をすすめるための補助金である「木の香るまちづくり推進事業」には上限300万円、総額の2分の1までという制限があります。しかし、今回の「補助」は、「たまたま基金が残っている(林業環境政策課)」ことから、特例として「今回限り」の青天井。約1億円にもなる巨額支出を補助事業化して市町村や県民に応募を求めることもなく、県内部の「お手盛り」で残額を先に使い切ってしまおうという安直な発想が透けて見えます。
審議の過程での事務局の林業振興環境部の説明にもルーズさが目だちました。
「(木質化)は公立病院で全国で初めてなので注目される。積極的にPRして視察ツーリズムを受け入れ県内に金を落とし経済効果を高める」などという事務局の説明に対し、委員から「本当に全国初なのか」という質問が出ると、すぐに「全国初の事例ということでPRはしない」と撤回するなど、真剣な検討のうえでの説明であるのか疑問を抱かせるものでした。
同審議会は今春、高知県の森林保全にとって焦眉の課題であるニホンジカの食害被害防止を進めるための基金からの支出に難色を示し、「県が責任を持つべき」として支出の大半を認めない今回とは対照的な判断をしています。整合性をどう説明するのでしょうか。
県森林行政に詳しい関係者は「県も運営委員会も節操がなさ過ぎる。森林環境を守るためにもっと真剣に使い方を考えるべきだ」と話しました。(2010年9月26日 高知民報) |