2010年9月12日

三嶺山頂を面的に防護 徳島県が実施、高知県も共同 延長2・3q

徳島県が公表した計画。かなり高知県分に食い込んでいる

ニホンジカの異常な増加による食害で植生が消滅し深刻な問題になっている三嶺(1893メートル、高知県香美市・徳島県三好市境に位置)の山頂周辺の天然記念物ミヤマクマザサやコメツツジ群落を保護するため、山頂一帯を防護ネットで広く面的に覆う計画が進んでいます。

この事業に取り組むのは徳島県。事業の概要は以下のようなもの。
@山頂を中心に延長2300メートルの防護ネットを設置する(別図参照)。
Aネットはビニール系のもので支柱の高さは1・8メートル。4メートル間隔に設置し、アンカーを打ち込んでめくれ上がりを防止する。
B登山道を横切る部分にはテキサスゲートを設ける。
C9月20日頃、ヘリコプターで資材を山頂に上げて2週間程度かけて設置する。
D総事業費は約1000万円。徳島県が22年、23年度にまたがって事業化していたが、対策を急ぐ必要があるとしてこれを前倒しする補正予算を9月県議会に提出する予定。

積極的な徳島県の動きの背景には、飯泉嘉門・県知事が7月31日、被害調査のために自然保護団体と共に三嶺山頂に登ったことがあります。「知事が現地を見たことが、今回の前倒しの判断につながっている」(徳島県自然環境課)。

今回、徳島県がネットを設置しようとしているエリアには高知県分がかなり含まれて3いるにもかかわらず、事前に高知側への相談がなったことから、「三嶺を守る会」や高知県は連携した取り組みをすすめるための話し合いを徳島県に求め、9月7日に協議がおこわなわれました。

高知県側からは積雪に耐える設置方法、希少植物がかつてあった場所を防護する範囲に加えることなどを求める要望を出され、徳島県自然環境課は「事前の相談はやるべきだった。これからはしっかり話をしていく」。

三嶺周辺のニホンジカによる食害は全国的有数のひどい状況になっていますが、高知県が個体数調整で活発な取り組みをしているものの他県との温度差が目立ち、県を越えた取り組みは充分とはいえませんでした。今回の三嶺山頂一帯への防護ネット設置が、県を越えたさらなる対策の前進につながっていくのかどうかが注目されます。(2010年9月12日 高知民報)