2010年9月12日

コラムアンテナ 尾崎高知県知事が高知市教育長を叱責

8月24日の高知県・高知市のトップ会談では、図書館とナイターの問題が大きく報じられたが、取材していて強く印象に残ったのは、教育=学力問題だった(会談でのやりとりは後述)。

今年度の「全国学力テスト」の話になった時、大勢の報道関係者の前で尾崎正直・県知事が、高知市の松原和広教育長に強い不快感を露わにし、強い調子で叱責する光景が繰り広げられた。
 
県と高知市、県教育委員会と高知市教育委員会は対等な関係のはずであるが、度し難い「上から目線」。教師として中学校現場の経験を持つ松原氏に満座の中で恥をかかせるやり方に、傍で聞いていたこちらまでが息苦しくなる思いがした。

尾崎知事は松原氏の「長期的」という言葉に強く反応した。小学校と対照的に、依然として最下位クラスの中学校の「元凶」である高知市教委に知事が明らかにイラついていることが見てとれるが、尻を叩いて短期的な成果を強調すれば、学力が向上すると知事は本気で思っているのだろうか。全国学テ=「学力」ではない。学力のとらえ方があまりにも狭い。

今の中学校にいる困難を抱える生徒の学力向上、進路保障への取り組みは知事に言われるまでもなく現場は全力をあげている。

だが、それだけにとどまらず、より根本的に小学校段階からの積み上げを大切にすべきだという松原氏の発言は正論であり、なぜ批判されなければならないのか理解に苦しむ。言うのであれば、目の前に課題に追われるばかりで、長期的ビジョンを見据えた取り組みを欠いていたこそが問題にされるべきだ。

教育の相手は機械やモノではない生身の人間であり、いくら焦っても思い通りの結果がでるものではない。それどころか「過ぎたるは及ばざるがごとし」で、性急に結果を求めることが逆効果にもなる。急がば回れ。事はじっくり構えなければならない。知事という立場にある者が、「百年の計」である教育問題で「すぐに成果を出せ」と、自分の部下でさえない他自治体の教育長を叱責するような環境下で、高知県の教育がよくなるとは思えない。(N)

松原 数学Bができなかったのは単に中学校だけでなく、小学校低学年からの積み重ねが、中学校の状況を生み出している。小学校から引き上げていく積み重ねが、学力向上の長期的展望に立つものだ。

尾崎 教育長。課題は数学Bだけではない。数学Aも国語も。それともうひとつ。長期的と言うが、今中学校に在籍する子どもにどう対応するのか。長期的課題と何十年も言ってきた。今変えなければならない。その成果を県民市民が待っている。いかがですか。

松原 今の子どもの学力向上はやる。ただ小学の段階からも長期的に積み上げて行こうということだ。直接子どもに責任を負う学校の知恵が出てこないと本物にならない。

岡崎誠也市長 数学Bは応用・・・

尾崎 数学Bだけではない。Aも。そこが問題だ。

松原 改善の兆しがあることは事実だが、低いことは間違いない。

尾崎 兆し?こういう話は率直に現実を受け止めて対応していくことが大切だ。長期的という言葉の陰で短期的な成果が問われないわけにはいかない。そうでしょ。

松原 はい。

尾崎 長期的とずっと言ってきて変わらないのだから、今の問題としてどう取り組むかが重要。高知市を全力でバックアップするので引き続きよろしくお願いしたい。(2010年9月12日 高知民報)