2010年9月5日

コラム南炎 すっきりしないナイター決着

膠着していた高知市大原町の市営高知球場へのナイター照明設置が、設置主体となる高知市が借りる起債の償還分のうち交付税措置されない「実損」部分を県が補助金として負担することを条件に同球場に設置されることが急転直下決着した▼県民のスポーツ施設が充実することは良いことではあるが、事の経過、6億円以上見込まれる工事費負担、一部県議の動きなどをみるとどうもすっきりしない▼高知市はナイター照明設備について専門家による検討委員会を設置し、昨年11月に「設置場所の第一候補は県立春野球場」という結論を得ていたにもかかわらず、「金は県が出すから」という強引な手法でこれを引っくり返した。県も特定不妊治療など市民の切実な問題には冷淡で、ことあるごとに「中核市の自覚」を求めるいつもの姿勢とは対照的だ。2013年に高知県で開催される全国スポーツマスターズ大会の対応を理由として強調したが、試合は数カ所の球場に分散して開かれるわけで、高知球場に設置しなければならない理由にはならない▼ナイター照明が設置されることでプロ野球の試合が観戦できるかのような受け止めも一部あるが、設置される照明はプロ野球の試合を実施できる光度はなく、公式用というグレードの落ちるものだし、高知球場の収容能力は6000人、春野球場は15000人で、どちらもプロ興行に必要な2万人には遠く及ばない。四国・九州アイランドリーグの試合がいくつか開催されることはあるだろうが、尾ア正直知事が言うような「サラリーマンの仕事帰り、家族連れの楽しみ、観戦後に一杯やる経済効果」に多くを期待するのは無理がある。税金の使途の優先順位がこれでいいのかという気がしてならない。もっと慎重な議論を求めたい。(ひ)(2010年9月5日 高知民報)