|
総量規制の表示がある消費者金融のATM |
消費者金融などによる多重債務被害根絶をめざす運動が実り、貸金業法改正が6月18日から本格実施されました。中心点は上限金利引き下げと年収の3分の1を超える借り入れを禁じる総量規制。これらは運動の成果であると同時に市民生活に一定の影響を与えることも予想されることから、今後の課題について考えます。
貸金業法の対象となる「貸金業者」とは銀行や信用金庫、信用組合、労働金庫などの金融機関以外の消費者金融・クレジット会社(商品購入のための割賦は対象外、キャッシングは対象)。
法改正の完全実施により、これまで利息制限法の上限20%と出資法の29・2%の差である「グレーゾーン」が撤廃され、20%を超える利息には罰則が科せられることになりました。
また貸金業者から個人の年収3分の1を超える借金ができなくなる「総量規制」が実施されます。
借り手の返済能力の調査が貸金業者側に義務付けられ、@一貸金業者から50万円を超えて借りる場合、A複数の貸金業者から100万円を超えて借りる場合には、年収を証明する書類(源泉徴収票、確定申告書など)を提出させて年収の3分の1以内であるかどうかをチェック。貸金業者からの総借り入れ額が法定範囲内に収まることが確認できければ新たに借金をさせることはできません。
ここでいう借金残高に貸金業者以外からの借金は含まれず、銀行に借りた住宅や自動車ローン、商品購入のためのクレジットなどは除外されます。
■今後の課題
総量規制により、借金返済のために借金を重ねる多重債務がより早期に発見される効果が期待される一方、借り先がないために非合法なヤミ金に手を出す事例が増えていくことも懸念されています。また上限金利が引き下げられたとはいえ、20%というのは相当な高金利であり、さらなる引き下げが必要です。
高知市市民生活課の池田康友係長は「日本では銀行が低利のきちんとした消費者金融をやっておらず、無担保で貸すところがない。結婚式の祝い金を包むための借金で多重債務に転落した例もある。貯金がない人のセーフティネットとして、低利の健全な消費者金融が必要ではないか」。
労働金庫各支店では、失業による収入減や多重債務の相談に平日19時、土日17時まで応じる「暮らしのお金なんでも相談」を開き、可能な場合には債務を低利のものに一本化するなどの取り組みをはじめています。
川村和夫・四国労働金庫高知営業本部長は6月7日の改正貸金業法完全施行の円滑な実施に関する対策会議で「多重債務には積極的に関わっていかなければならない。高利からの借り換え、多重債務救済運動を柱に全国的に取り組む」と発言。金融機関自らが問題解決に踏み出す動きとして注目されます。(2010年6月20日 高知民報) |