2010年6月13日

特定不妊治療の中核市外し 歯止め効果に疑問

会見で発言する尾崎高知県知事と岡崎高知市長
国の「特定不妊治療助成事業」(1回15万円上限)に、県独自に5万円を上乗せ助成する制度から、中核市を理由に高知市を除外した問題で5月19日に崎誠也高知市長は尾崎正直・高知県知事と会談し、「他事業に波及しないことが確認できた」と除外を了承。県負担に相当する950万円を市で肩代わりする補正予算を6月議会に提出しました。同様の問題が懸念される乳幼児医療費助成などについて知事は「引き続き協力が必要」としながらも、他事業については「ケース・バイ・ケース」。今後も火種を残す玉虫色の決着となりました。

6月3日に尾崎知事が、同4日には岡崎高知市長が記者会見で、この問題について発言していますが、双方の言い分にはニュアンスのズレがあり、岡崎市長が言う「他事業に波及させない確認」とは言いがたいものです。

重要なのは県が言う「県単助成分も含めて交付税で措置されており、中核市としての責任を自覚して高知市自ら負担するのが筋」という理由付けを、高知市が半ば認めたこと。

これにより県は本来、高知市が負担すべきところを市財政の厳しさに配慮して協力をしているに過ぎず、県の判断次第で負担率カットなどを持ちだすフリーハンドを得たことになります。さらに岡崎市長自らが「基本方針の整理をしたという認識。これ以外一切やらないということではない。出てきた時には別途協議する」と述べているように歯止めとは言いがたいのが実際です。

尾崎正直県知事の会見での発言

−−岡崎市長との合意内容は。

尾崎知事 中核市としての責任を果たしていただくことが非常に重要だと思っている。しかし、それが原則とはいいながらも、県・高知市それぞれ時々の財政状況、行政としての都合がある。大切にしなければならないのは、県民にとってどうあるのが一番良いかということ。

今の状況であれば、特定不妊治療のような財政規模が比較的少額なものについては高知市としてやっていただきたい。しかし、より大規模なもの、現実問題として高知市単独ではなかなか対応しきれない問題があった時に吟味した結果、県民のためにそれであってもやるべきだというものが出てきた時には、県としてもしっかり協力する。中核市だから協力しないという紋切り型の解釈をしているわけではない。結果として(乳幼児医療費は)、引き続き協力が必要と判断した。

−−堅持の確約か?

尾崎知事 もちろんケースバイケースで判断しなければならないが、(乳幼児医療については)県として協力させていただく。必要なことだと申し上げた。

岡崎高知市長

−−知事とはどういう話で決着したのか。

岡崎市長 できるだけ早く決着したいということもあり、5月19日に知事室で協議した。一番懸念していたのは医療保健分野で他事業に「中核市外し」が拡大していくこと。障害者医療、母子医療には県が単独で相当の減免をしているが、県内部では「高知市は中核市なので独自でやっていただいたらどうか」という議論がある。我々は県制度で始めたものから高知市を外すことはおかしいと一貫して主張しているが、他に波及することを非常に心配していた。なんとか歯止めをしておかなければならない。

34万5000人の高知市民の県人口におけるシェアは4割だが、個人県民税は県全体の54%、100億円を払っているのに、なぜ外すのかというのが我々の主張だ。

個別事業については知事が言うように、我々が個々判断していかなければならないが、財政負担が大きいもの、県市連携した重要なものについては引き続きやってほしいということを確認した。今回の特定不妊治療はどちらかといえば個別事業と判断したので、高知市の判断でやることにした。

−−特定不妊治療に限った話か。

岡崎市長 個別事業的なものとして今後どういうものが出てくるかは別。大筋の整理をした。基本方針を整理したという認識で、これ以外は一切やらないということではない。出てきたときはまた別途協議になる。

−−交付税に(特定不妊治療分は)入ってないとの主張を変えたのか。

岡崎市長 4月、5月に10人ほどの申請があり、15万円以内に収まっていれば問題ないが、20万円を超えている方も多く、他市町村との差額を早く解消しなければと考え予算計上した。交付税の論議はいろいろあるが、入っている入ってないという話をするときりがない。個別の事業は特定されていないという主張をしている。(2010年6月13日 高知民報)