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高知市民図書館 |
老朽化、狭隘化により改築が急がれている高知県立図書館と高知市民図書館について、県と高知市は同一建物に両館を並存させる合築という手法でコスト削減を検討してきましたが、残された時間はあとわずか。タイムリミットが迫っているにもかかわらず、合築への協議ははかばかしくなく、「こんな状態で合築しても、うまくいくはずがない。はやく単独整備で動き出すべきだ(市民図書館関係者)」という声があがっています。
現在は高知市が県に追手前小跡地での両館合築を提案し、県の返答を待っている状態ですが、高知市は平成22度中に構想を立てて計画をすすめなければ、合併特例債が使えなくなることから待ったなし。「いくら遅くても9月議会で合築するのか、単独でいくのかを決めないと間に合わない」(市民図書館関係者)
県政策企画課は「市側に時間がなく、9月議会までに合築するか、しないかを公表しなければならないが、県には9月でなければならない理由はない。合築で建物のコスト面の一定のメリットが考えられるが地代負担もあるし、図書館だけでなく、東西軸、新歴史館なども同時進行で考えていかなければならない」。一方で県教育委員会関係者は「また後回しにされたらかなわない。どこでもいいから早く決めてほしい」。中沢卓史・県教育長は「追手前小跡地は最有力候補だ」と述べています。
■先行する新歴史館
ここにきて合築の新たな「障害」となっているのが県が打ち出した山内家資料などを保管・展示する新歴史資料館。尾崎正直県知事は「高知財務事務所跡地が有力な候補地」と述べ、隣接する土地の買い増しも検討されるなど、財務事務所跡地への新歴史館建設の可能性が高まっています。
このため「同じ時期に、すぐ近くで県が箱物を二つ整備するのはバランスが悪い。おまけに同じ建物に図書館が同居する『二世帯住宅』では県民批判に耐える説明は難しい」(県幹部)と懸念する声が上がっています。
県にすれば観光振興や中心商店街活性化策との関連もあり、新歴史館建設にウエイトが置かれるのは避けられず、「無理して高知市に付き合い、合築の結論を9月までに出す必要はない」のが実際。県議会では高知市選出の自民党古参議員が合築を批判し、単独整備を前提に県立図書館が提言した「高知県の図書館行政のあり方」を絶賛。公明党、共産党も繰り返し単独整備を求め、民主党・県民クラブも合築には慎重な姿勢をとるなど、議会の動向も不透明です。
■カギ握る公社清算
岡崎誠也高知市長は5月22日、取材に対し「我々は合築でも単独でもやる。22年度中には構想を明らかにする」とコメントしました。
単独整備される場合に高知市民図書館を追手前小跡地に移転させることは既定の路線ですが、問題は県立図書館用地。高知公園内の現在地は史跡に隣接しているため改築は不可能であり、移転をしなければなりません。
これまで追手前小跡地以外で議論になったのは@城西公園、Aシキボウ跡地、B高知駅前の県有地。城西公園の利用には高知市の同意が必要であり、公園をつぶすことに市民的な批判も予想されます。また駅前の県有地は観光に使うべきで図書館のような文化施設はそぐわないという意見があります。
シキボウ跡地は駐車場を完備した郊外型、市町村図書館支援という県立図書館の役割を果たすにふさわしいという評価がある一方、県土地開発公社の所有地であるため県が使うには約50億円で買い戻さなければならず建物に加え土地費用を捻出することは難しい事情があるなど、どの土地にも課題があります。
ただ高度成長期の産物で、使うあてのない「塩漬け地」を抱える公社を清算すべきだという議論が全国的にあり、25年度までに国起債で公社を清算する検討が県内部でもすすめられています。シキボウ跡地については、公社清算の動向次第で利用に現実味が出てくる可能性もあります。(2010年5月30日 高知民報) |