医療保険が適用されず高額な医療費のかかる不妊治療(体外受精、顕微授精)を受ける家族の負担軽減のため国が取り組んでいる「特定不妊治療助成事業」(1回15万円上限)に、高知県が独自に5万円の助成を上乗せする制度から高知市を中核市であることを理由に除外した問題で、尾崎正直県知事と岡崎誠也高知市長の間で、このほど高知市を除外することの合意が成立。高知市は6月市議会にこれまで県が助成していた5万円分を市単独で負担して上乗せ助成する予算950万円を提案することにしています。事実上の高知市の全面降伏といえ、3月に全会一致で「根拠のない中核市外しを認めない」という内容の意見書を決議した市議会も梯子を外された格好。
県知事と高知市長の間の合意内容は以下。
@産業振興計画を推進する施策や学力向上等の教育施策などの基幹事業、障害者医療、母子医療助成など県が支援しなければ中核市の負担が過大となるものは、引き続き県として配慮していく。
Aそのほかの個別的な事業については、中核市としての判断ですすめていただく。
高知市側はこれを受けて、「特定不妊治療の県単助成廃止を受け入れることが、特に医療費助成に代表される他の県単助成にすべからく波及することを懸念していたが、その恐れがないことが確認できた」ので6月市議会に市単独で予算計上をすることとしています。
しかし、合意内容は特定不妊治療以外の県単助成が今後も堅持されるかどうかは不透明で、県健康対策課が「配慮という言葉のニュアンスがよく分からないが、特定不妊治療以外の助成の維持を確約するものではないのではないか」とコメントするほど。
また合意にはもっともボリュームの大きい「乳幼児医療」という記載すらなく、今後に火種を残しかねない危うい内容となっています。市民負担を軽減するため緊急避難的に高知市が予算を計上することはありうるにしても、意見書決議にもとづいて引き続き、中核市であることをもって根拠のない差別を許さないという声を高知市が県に上げ続けていく必要があります。(2010年5月25日 高知民報)
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