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あんしんセンターの駐車場 |
高知市が約50億円をかけて市民病院跡地に建設し、3月にオープンした「総合あんしんセンター」。開館から1カ月が経過したが、センターという名はついているものの、利用する市民の数は多くなく、閑散としている印象がある。休日夜間急患センターなど以外には市民が利用する余地がほとんどなく、市が財政難をことあるごとに言っている時に、莫大な費用を投じてまで建てなければならなかった施設とは思えない。
■ワンストップ?
同センター建設の最大の理由は、県保健衛生総合庁舎(丸ノ内)への間借りを解消し、保健福祉センター(塩田町)とに分散している保健所機能を集約してワンストップサービスを実施するというものだった。
高知市が中核市であるにもかかわらず、自前の保健所の建物を持っていない事態を解消するのは当然の方向だが、保健所を充実する視点からみても同センターには合点がいかない。
保健所の市民サービスで最も量的にボリュームのある事業は健診事業であるが、どうわけか新センターには市民向け健診スペースが設けられておらず、大半の健診は、これまで同様に保健福祉センター(塩田町)まで保健所職員が出向いて実施することになっている。ところが取り組みによっては「総合あんしんセンター」内でもやるというのであるから、なんともちぐはぐ。職員の事務室は集約されたかもしれないが、市民サービスがバラバラでは「保健所のワンストップサービス」という掛け声とはズレがある。
■中途半端さ否めず
「総合あんしんセンター」は180台の駐車スペースを要し、3階の市有スペースには250人を収容できる大会議室も設備されている。駐車場は県医師会・県歯科医師会などの団体分として、市有地を目的外使用として賃貸している。
分かりにくいのは会議室の利用で、市民には「市庁舎なので貸し出しはしない」としながら、県医師会などについては「一緒にやっていこうという団体なので、医療や健康がテーマの行事であれば使用料はとらない」(保健総務課)。この会議室は庁舎の一部であるため貸し出しや使用料規定もないため、事実上、将来にわたって一部団体がフリーパスで使用できることになる。貸し出しルールを作り、必要に応じて減免するのが筋だろう。
結局、同センターに入居した保健所、消防局の一部、県医師会、県歯科医師会、日赤県支部など、それぞれの事務スペースが寄せ集められたに過ぎず、市民にとって新しいサービスを提供するものではない。中でも目玉であるはずの保健所が市民サービスに必要な機能を十分確保できていないという中途半端さには、県医師会との合築ありきの寄り合い所帯に本質的な問題があるといえ、市関係者からも「結局、何のために建てたのか良く分からない」との声が聞こえる。
合築ではなく保健所の充実に焦点を当てた設計にしておくべきだったという印象はぬぐえないが、既に施設はできてしまっている。せめて市民がもっと利用でき、その利便性を実感できるような運営を関係者には求めたい。(N)(2010年5月2日 高知民報) |