2010年4月25日

コラムアンテナ どうなる銀座アンテナショップ 懸念再燃

(写真上)レストランが入る2階フロア、(下)沖縄に隣接する高知の店の予定地
7月17日のオープンにむけて県が鳴り物入りで準備をすすめてきた、「県営」銀座アンテナショップが、4月14、16日に開かれた県議会総務委員会事業概要説明の場で自民党県議などから付けられたクレームにより開店日を「一定期間遅らせる」(岩城孝章産業振興部長)という混沌とした事態に陥っている。

批判の急先鋒は自民党県連幹事長を務める武石利彦県議。既出の議論の域を出ない細かな点や地産外商公社が雇用したスタッフの人選などをあれこれ指摘しながら、実際には店のコンセプトや根本設計など計画を白紙に戻してリセットせよというに等しい注文を執拗に執行部に迫った。「ここはじっくり腰をすえるのが我々の考え方。いいものを作るよう、開店時期を急ぎ過ぎないようにやってほしい」

銀座へのアンテナショップ出店は、尾崎正直高知県知事が「県政浮揚の切り札」として強引にすすめてきたものだ。県政の中心課題としてこの間県議会でかなり議論されてきたテーマである。昨年7月県議会では「日本共産党と緑心会」が地産外商公社とアンテナショップ関連予算の削除を提案。自民党を代表して中西哲議員が反対討論にたち「遅いくらいだ」と出店を後押したことは記憶に新しい。

さんざん出店を推進してきた会派の議員が、店の改装を請け負う業者も決まり、着工の直前になってから白紙撤回に近いことを言い立てることに「そんな議論は予算を通す前にしておくべき。今ごろ無責任だ」という批判も聞こえる。

さすがに自民党県議団も一枚岩ではなく、三石文隆県議などは「議会に言われたくらいでコロコロ変えるな。信念を持て」と逆のスタンスで執行部に迫る始末で、同党が国政野党に転落し、脱党者が相次いで崩壊現象が起きている中で、尾崎県政への間合いのコントロールが効かなくなっている様子が垣間見える。

■家賃1日20万円

開店時期を多少延ばしたところで、地価が全国一高い銀座に「県営アンテナショップ」を出店することの危険性は何も変らない。大石宗議員(県民クラブ)は、女性や外国人をターゲットにしたコンセプトがありふれていると指摘していたが、それを言うなら銀座という地名にこだわり、繁華街から外れたノッポビルを選択したこと、さらにはいまどき多額の税金を投入して公がアンテナショップを出すという感覚こそが古すぎるのではないか。

忘れてならないのは4月から家賃の発生がすでに生じていること。月650万円。すなわち1日20万円以上の血税が何もしなくても垂れ流されている。スタッフの人件費も支払わなければならず、じっくり開店時期を延ばすことも許されない。岩城産業振興部長も「何カ月も延ばすつもりはない」と言うように、「延期」とは言ってもクレームを言い立てる県議らのメンツをたてる「ガス抜き」なのかもしれないが、開店直前になっても、このような話が出るほどアンテナショップの先行きには暗雲が垂れ込めている。

「進むも地獄、引くも地獄」。

知事がろくな検討もないまま強引に開店を急がせてきたツケが回ってきた、ある意味当然の帰結であるが、この問題は県政のアキレス腱となる様相を呈してきている。知事の拙速で強引な姿勢とともに、賛同してきた議会会派の責任も免れないだろう。(N)(2010年4月25日 高知民報)