今年度から実施される公立高校授業料無償化のために国が自治体に支払う交付金の対象から「3年を超えて(定時制・通信制は4年)高等学校に在籍している生徒」が除かれる見通しになった。ただ国は自治体負担であれば3年を超えて在籍する生徒も無償にすることは認めており、後は自治体の判断に委ねられることになる。
県教委は6月県議会に高校無償化の具体的な内容を定めた条例改定案を提出する必要があるものの、「財政当局との協議はこれから」(県教委高等学校課)という状況。
国が無償化の対象にするのは在籍が全日制36カ月、定時・通信48カ月までの生徒。留年して進級できないなどの事情でこれを越えた期間は(全日37カ月、定通49カ月以降)は無償化の対象にはならない。
しかし留年する生徒の大半は家庭が経済的な困難を抱えている。最も支援を必要としている生徒を突き放して授業料を徴収するというのでは本末転倒。困難を抱える生徒を退学に追いやるに等しい仕打である。家庭の経済的状態にかかわらず高校生の学びを社会全体で保障することを目的に取り組む高校無償化の理念にも背くものだ。
「他県の状況を調査して検討しているところ。留年した生徒から授業料をとるのは難しいだろうが、取ると決めている県もある(県教委高等学校課)」と今後の方針はまだ不確定だ。国が定める期間を超えて高校に在籍する生徒も、4月からは新しい教室で学習を始めている。にもかかわらず22年度の授業料支払いの見通しがはっきりしないため、授業料がかかるのか無償になるのか生徒にも分からないという非常に不安定な状態になっており、大きな不安を与えている。県教委は早く方針を打ち出し、この不安を取り除かねばならない。
規定された在籍期間を超えて無償化した場合に県教委が見積もっている一般財源の継ぎ足し額は「大きな額ではない(中沢卓史県教育長)。これを徴収するため事務を残すことも行政的に非効率といわなければならない。
県教委幹部は「(国の定める期間を超えた生徒から)授業料をとるつもりはない。国がみないなら県がみるように財政当局を説得するのが我々の仕事」と話しているように、県教委にも一部生徒だけから授業料をとる差別的な取扱いには抵抗感があるのが実際。県政が困難を抱える生徒から学びを奪うことのない配慮が強く求められる。(N)(2010年4月18日 高知民報) |