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スタッフが使っている点訳ソフトをインストールしたノートパソコン、かなり古い |
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3月29日に公表された高知市包括外部監査結果報告で、高知点字図書館(公文義明館長)が元点訳ボランティアの遺族から寄贈されたノートパソコンを「放置していた」と強く非難する異例の記載がありました。同館は「ボランティアに貸し出すための予備として保管していたもの」と一方的な批判には承服しかねる様子ですが、新しいパソコンを活用できていなかったのは活動の弱さの表れであるのも確か。現場の非難で終わらせるのではなく、これを機に館の体制を強化し活動を充実させることが重要です。
高知点字図書館は昭和42年に障害者福祉法に定められた視覚障害者情報提供施設として開設され、点字図書や録音図書(テープ、CD)の作成、無料貸し出し業務などに取り組んでいます。利用者は高知市内だけでなく県下一円に及び、点字図書や録音図書は点訳ボランティア、音訳ボランティア(それぞれ90人程度を組織)の協力で作られています。
かつては革新市政の先進的な取り組みとして全国をリードする活動を展開した同館ですが、大型開発に傾倒し福祉を軽視する市政に転換していく中で、その位置付けは年々低下していきました。
端的にあらわしているのが、同館の年間運営費である「点字図書館活動費」。年々ジリジリ下がっていましたが、市の「財政難」と歩調を合わせここ数年で予算が激減しています。予算減の最大の要因は退職した正職員の補充をしていないこと。高度な専門性が必要な部署であるにもかかわらず、「職員が育たずボランティアまかせになっている」、「機器が古く要望に応えてもらえない」などの声が関係者からあがっています。
点字図書館を所管する市健康福祉部幹部は「点字図書館の人員は元気いきがい課に含まれ、課長の判断で配置を決めている。元気いきがい課本体が一杯一杯で人をまわす余裕がない。人員増を要求しているがつけてもらえない」。視覚障害者にとってなくてはならない施設としての活動を保障する予算と、ふさわしい人材配置を市政に確立させる必要があります。
■県に当事者意識なし
同館の活動は県内全域を対象にしたもので、本来は県が第一義的に責任を負うべきものです。しかし、県に当事者意識はなく、ボランティア育成講座や図書購入費の一部を補助しているものの、運営や職員配置に応分の負担しているとは到底いえない状態です。
県地域福祉部幹部は「点字図書館は、本来県が持つべきでは」との問いに対し、「県立図書館の移転時に話題になるかもしれないが、これまで県内部で検討したことはないのでコメントができない」。全県を対象にした視力障害者へのサービス提供を、高知市だけに押し付けていることの矛盾には実感が沸いていない様子でした。
高知市政の軽視、県の無関心を打破するためには利用者・ボランティア・職員が一丸となって、あるべき館の設置形態や館活動の方向性を建設的に提言できる場作りが急がれます。(2010年4月11日 高知民報) |