2010年3月14日

特定不妊治療県助成 中核市排除の根拠どこに? 高知市は猛反発

厚生労働省が医療保険が適用されず高額な医療費のかかる不妊治療(体外受精、顕微授精)を受ける家族の負担軽減のために取り組んでいる支援制度「特定不妊治療助成事業」(1回15万円上限、年2回、最長5年間)に高知県が独自に1回5万円の助成を継ぎ足して上乗せする単独制度から、県が22年度以降高知市民を排除したことに波紋が広がっています。この問題の背景には同市への福祉分野の支援策を、ことあるごとに中核市になったことを口実に打ち切ろうとする県との間の積年の軋轢がありますが、県が今回持ち出した特定不妊治療の上乗せ制度から高知市民を排除する理由は説得力に欠け、県の最重要課題の一つである少子化対策にも逆行するという批判があがっています。

県単独の上乗せ制度の土台にあたるのが、国と県・高知市が実施主体となって1回15万円までの治療費を2分の1づつ負担する制度。高知市は国と折半して75000円を負担しています。

一方、県の上乗せ制度は、国制度だけでは助成額が不十分であることから、県民の負担軽減を目的にした県独自の施策で19年度からスタート。県は高知市民分(約750万円)を含め、県費で全額を負担してきましたが、22年度からは高知市を制度から排除するかたちに補助金要綱を変えるとしています。

高知市が他事業への波及を警戒して穴埋めする予算措置をしなかったため、高知市民は他自治体に住む県民より1回の治療につき5万円の負担が来年度から強いられることになります。

3月2日の県議会本会議で塚地佐智議員(日本共産党と緑心会)は、高知市を根拠も定かでなく排除する県の措置の撤回を要求。尾崎正直県知事は「これまで高知市分を含め県が負担してきたのは暫定措置だ。事業の実施主体である高知市に自ら負担するよう要請したが上乗せされなかった。不妊治療を望む高知市民の気持ちを踏まえることは大切であり、高知市の中核市としての役割も重要なので今後も話し合っていく」と答弁しました。

この知事発言に対し高知市財務部関係者は「高知市の中核市としての責任は国と折半している75000円を負担することで果たしている。今回問題になっているのは県の独自施策であり、中核市の責任とは関係ない。中核市になって保健業務は移管されたが、県が受け持つ分野、中核市が受け持つ分野、それぞれ責任があるのは当然で、十把一絡げに個人県民税の54%を負担する高知市民を根拠もなく排除することは認められない」と猛反発。

3月8日に開会した高知市議会では、この問題を含め、県単独事業における高知市への補助について、中核市であることだけをもって明確な根拠のないまま補助率で差異をつけたり、制度から除外して高知市民に不利益の生じることがないよう求める意見書が提出される動きが出ています。(2010年3月14日 高知民報)