2010年2月14日

コラムアンテナ 「米巡洋艦宿毛寄港の持つ意味」

BMDの心臓部、戦闘指令室
2月1日、宿毛湾港で米海軍ミサイル巡洋艦レイク・エリーの入港と抗議集会デモの取材をした。2006年に米駆逐艦ラッセル、2008年には同じくオカーン入港も取材したので、これらと比べ今回感じたことを書いてみたい。

最も印象深かったのはこれまでの駆逐艦と比べ、巡洋艦が入港したということが米海軍にとって大きな意味を持っているということだった。

我々には分かりにくいが海軍では駆逐艦と巡洋艦の格の差は歴然としている。ロン・ボクソール艦長は寄港時の会見で巡洋艦としての初の宿毛寄港を強調し、「最新鋭の戦闘艦」、「米海軍で最も優秀な兵士を率いている」と繰り返し、選ばれたエリートであることを何度も強調した(別項参照)。

それもそのはず。レイク・エリーは08年2月に米海軍が最も力を入れているBMD(弾道ミサイル防衛)実証実験で実際に人工衛星を撃ち落した正真正銘、最前線で活動している艦である。

艦名のレイク・エリーは英軍と戦った独立戦争で米軍が起死回生の勝利を収めた「エリー湖の戦い」にちなんだもの。米国人にとってこれほど誇り高い名前はない。そのことを示すようにレイク・エリー艦橋には「DONT GIVE UP THE SHIP」という文字が描かれていた。

レイク・エリーには女性水兵が1人も乗船していないということにも驚いた(士官には5人の女性がいた)。オカーンは乗員の2割が女性だった。海軍内でレイク・エリーの位置付けが明らかに異なっていることが分かる。

このように米海軍にとって重要な意味を持つレイク・エリーが宿毛湾に入ったことは、「前座」ではなく「真打登場」、太平洋地域のBMD計画における宿毛湾の位置付けが新たな段階に入ったといえるのではなかろうか。

ボクソール艦長は、海上自衛隊との連携が東アジアのみならず太平洋地域全体の平和と安定に役立っているとも繰り返していた。米海軍第7艦隊の守備範囲はインド以東の地球の半分という広大さで、「日本と極東の安全」をうたう日米安保が、実際には海上自衛隊が下請けとなってアメリカの世界戦略の手駒として使われている実態を垣間見ることができる。

県下の港湾がアメリカの世界戦略に組み込まれようとしている時に、高知県行政に、あまりにも警戒感が乏しいことが非常に気になる。尾崎正直・高知県知事はこれだけ頻繁に米艦の入港や入港打診が相次いでいるにもかかわらず、「米艦寄港の頻度が高まっているかどうかは、まだわからない」と言い(2月2日の会見)、「宿毛湾港は商業港。米軍使用の常態化という議論は違う」と述べた。

県行政が拘束されている県議会の非核港湾決議には「県民に親しまれる平和な港としなければならない」とある。知事は商業港に最新鋭のミサイル兵器を搭載し、核兵器の搭載が定かでない外国の軍艦が繰り返し入港する事態に矛盾を感じないのだろうか。(N)(2010年2月14日 高知民報)