2010年1月31日

コラムアンテナ 「高知らしさか、銀座への調和か」

2階レストランのイメージ図 「高知らしくない」という声が多く出た
7月オープンにむけ、4月からの着工へと準備が急ピッチですすんでいる「県営」銀座アンテナショップ。県産業振興部は店作りに民間関係者の知恵を借りるためのワーキンググループの会合を、1月22日に高知市内で開いたのだが、その席上では「バックヤードが少なすぎ」、「冷蔵庫が小さい」、「トイレが少ない」、「販売品目を決めなければレイアウトできない」など手厳しい意見が相次いだが、一番議論が白熱したのは、店の基本イメージについて。ここで県と委員の間に少なくないズレがあることが露呈した。

この日の会合には県が大手デザイン会社「丹青社」に委託した店の内外装(経費1億9500万円)やレイアウトをイメージさせる図面を提出(写真)したのだが、洋風で無機質なデザインは大半の委員に不評で、「きれいすぎて高知らしくない。もっと高知らしいものを」という声が多く出された。

県は「あくまでたたき台。まだ固まったものではない」とかわしながらも、「銀座にマッチした、あまりコテコテにならないものにしたいという思いを持っている(岩城孝章・県産振部長)」と述べたこともあり、会場は「高知らしさ」か「銀座にマッチ」させるのかをテーマにした一種の論争状態になった。漁協関係者の「銀座にあわせる必要などない。高知らしさを前面に出して銀座を変えてやるくらいの意気込みを持て」という声に対しては、「あまり目立ちすぎないようにしたい(岩城部長)」とバッサリ。

同部長によると、「目立ちすぎない」という意向は、尾崎正直・県知事と共有しているという。知事はコテコテの「商売人」的発想の持ち主なのかと思っていたのでやや意外であった。

連日連夜、準備作業に忙殺されている関係者には申し訳ないが、このアンテナショップの立地は確かに住所は銀座であるが、繁華街とは離れており、東京を知る人は例外なく「あの場所はね・・・」と言うウナギの寝床のような厳しい環境である。このような厳しい条件の中で、「及び腰」なスタンスでやっていけるのだろうか。

イメージ図を見た人は「高知らしくないね」という受け止めがやはり多い。ショップ開店を当初から懸命に後押ししてきた自民党中堅県議でさえ「上品でなくてもよい。高知が銀座に忽然(こつぜん)と現れてほしい」と注文をつける。

銀座に調和させるためにあえて高知らしさをスポイルしなければならないなら、それほど不釣合いなところになぜ出店しなければならないのか。新橋や新宿など、もっと庶民的な町にすればよかったのかもしれない。

そもそも莫大な税金を投入して「県営」アンテナショップを銀座に出店するというセンスが古くさく賛同できないが、出すと決まったからには、破綻しないようしっかりやってもらわねばならない。

高知県に関心を寄せてくれる人は、「上品さ」を求めているわけではない。世間に流されない、いごっそうな自己主張こそが「高知らしさ」の源であり魅力であるということを、よく考えてほしい。(N)(2010年1月24日 高知民報)