2009年12月20日

分限免職 処分基準にあいまいさ 県教育長「前例にしない」

高知県教育委員会は12月7日、女子生徒への不適切な指導を繰り返したとして県立高校の30代男性教員を12月4日付で分限免職処分したことを公表しました。分限免職とは懲戒処分のように行為そのものに対する懲罰ではなく、公務員としての適格性に欠けると認められた時に下される処分(退職金は支給される)ですが、適用の基準が主観的で、恣意的運用に道を開きかねない問題点を内包していることから、客観的なルールづくりなどにむけた慎重な議論が今後も必要になっています。

今回、分限免職となった男性教員には、特定の女子生徒を明け方まで自宅にとどめて指導したり、自家用車で送迎するなどの不適切な指導があったことは確かですが、処分を公表した川村文化美・高等学校課長が「わいせつ行為などはない。授業にも問題はなかった」と述べているように、女子生徒側からの訴えもなく、いわゆるハレンチ教員の不祥事とは異なる事例でした。

しかし、12月4日の記者会見や8日の県議会総務常任委員会で報告を受けた側の受け止めは「わいせつ教員は免職にして当然」というような短絡的なものが大半で、行為そのものを理由にする懲戒処分とは異なり、「適格性に欠ける」という抽象的な理由によって公務員の身分を剥奪するという重要な問題を含んだ処分案件であることが、ほとんど理解されていませんでした。

免職になった教員を知る同僚教員からは「熱血タイプ。熱心さのあまり視野が狭くなり非常識な指導をしてしまったのではないか」という声も。不適切な指導があったとしても、直ちに免職というような乱暴な方法ではなく、「指導を要する教員として改善研修を受けさせるのが筋ではないか」という指摘に対して川村・高等学校課長は「改善研修は授業力を向上させるためのものであり、今回のような事例はあてはまらない。顧問弁護士と相談して公務員の適格性に欠けると判断した」と述べるにとどまっており、県教委側の説明は説得力に欠けているのが実際です。

中沢卓史・県教育長は取材に対し「確かにハレンチ教員とは違う。行為そのものを懲戒処分にしたら免職にはならないだろうが、とにかく未熟で、教員としての資質に欠けると総合的に判断した。今回は異例なケースであり、前例にはしない。『指導を要する教員』の改善研修はルール通りやっていく」とコメントしました。(2009年12月20日 高知民報)