2009年12月6日

コラムアンテナ 「タレントの雑談の域出なかったエンジン01」

講座「勝ち組自慢」の発言者(11月28日、かるぽーと)
経済産業省から出向してきている安藤保彦・高知市副市長が、めぼしい職員を引き抜いたチームを庁内につくり、並々ならぬ意気込みで準備してきた「エンジン01文化戦略会議オープンカレッジin高知」が11月27日から29日まで、同市かるぽーとなどを会場に開かれた。

作家の林真理子氏が大会委員長を務め、テレビに登場する「文化人」やタレントが多数講師として来高するとあって、1コマ500円の講座のチケットの売れ行きは30〜40代女性を中心に上々。トータルでは1万枚ものチケットが売れたという。

「エンジン01」の資金は、実務にかかわる公の職員の人件費は除外して、直接の公金投入が高知市800万円、県400万円。他に国の補助金や企業の協賛金などで合計約6700万円の予算規模。これは高知県分だけであり、チケットの売上代金は東京の事務局活動費に全額が充当されるという。いずれにしても多額の税金と公的マンパワーが投入された公の色彩の極めて濃いイベントであることは間違いない。

たとえ一過性のイベントであれ、県民が、日常接することのできない本物の文化に触れることができるのであれば、公金を投じることは悪いことではない。しかし、取材した限りのシンポジウムや講座は、献身的に働くスタッフの方々には申し訳ないが、雑談の域を出るものではなく、税金を投入して開催しなければならないものとは思えなかった。
奥谷礼子「ザ・アール」社長


全体的にいきあたりばったりな感か強い。壇上でマイクを握るほとんどの発言者が「30秒前に発言しろといわれた。何を話せばいいのか」などと一様に言っていたのが印象に残る。要するに思い付きのおしゃべりなのだ。チケットを買い、会場に足を運んだ県民に、講座にふさわしいテーマを用意するのは、ギャラがあろうがなかろうがプロとしての最低限の礼儀だと思うが、「有名人が辺地までわざわざ来てやった」といわんばかりの傲慢さ、「上から目線」を感じてなんとも不愉快な気分にさせられた。

シンポジウムを聞いたある人は「有名なタレントが来ただけで喜ぶだろうと、高知県民を馬鹿にしているのではないか」と言っていたが、言い得て妙だ。

さらに不愉快さに拍車をかけたのが講座「勝ち組自慢」。高飛車な発言を売り物にしているタレントの川島なお美とともに、近頃はめっきり見かけなくなったが一時は「構造改革」、「派遣切り」のシンボル的存在だった奥谷礼子・人材派遣会社「ザ・アール」社長が発言者として出席した。

大半は川島なお美の新婚生活のノロケや三菱商事の元経営者、ベンチャー企業家の愚にもつかない自慢話だったが、この中で奥谷社長は「仕事がないと、ブースカ文句ばかり言っているのがいるが、やろうと思えば仕事は何でもある。親が悪い、会社が悪い、社会が悪いと他の責任にするのが私は一番嫌いだ。どんなことがあっても人生は全部、自己責任」と「自己責任論」を声高に叫ぶ場面があった。彼女の発言には、これまでにも「格差論は甘え」、「過労死は自己管理の問題」などひどいものがたくさんある。時代遅れの暴言やタレントの雑談を多額の税金を使って拝聴するのが、果たして文化なのか。高知の真の文化度が問われている。(N)(2009年12月6日 高知民報)