2009年12月6日

高知医療センター PFI契約解除に合意 オリックス9億3800万円放棄し「全面降伏」 企業団の健闘光る

来年度から直営化される高知医療センター
高知医療センター(高知市池)を経営する高知県・高知市病院企業団(山崎隆章企業長)の企業団議会が11月26日に開かれ、企業団とPFI事業(※1)の委託契約を交わす特別目的会社(SPC)「高知医療ピーエフアイ社(※2)」との間で合意した契約解除条件が明らかにされ、同議会は全会一致で承認しました。

合意内容はSPCが補償金など9億3800万円を放棄し、企業団が7700万円を負担するというもの。SPC=オリックスの「全面降伏」での決着となり、平成22年度から企業団の直営で病院は運営されることになります。

前橋本県政の肝煎りで導入された公立病院で全国初のPFI事業は17年の開院直後から、VFM(※3)が発揮されず、企業団はSPCと激しい論争を続けてきました。しかし企業団の構成団体である県・高知市にはオリックスと「敵対」することへの恐怖感が先行。契約解除には極めて消極的でしたが、企業団は粘り強く「SPCに儲けを抜かれるだけ。直営のほうが県民利益になる」と主張してきました。

19年12月、高知市議会が全会一致で議決した契約解除を視野に入れた経営改善を求める決議に支えられ、企業団議会はPFI契約解除にむけて積極的に動きました。病院が多額の赤字を出しているにもかかわらず、自社の儲けを確保するSPC=オリックスに県民的な批判が高まったことも「全面降伏」の背景にあるといえます。

契約解除により企業団は将来的に43億7000万円の負担を回避することができると試算。企業の儲けのために県民を食い物にする「民間活力」の限界と本質が白日の下にさらされました。

今後、PFI事業の総括が行われていきますが、制度を導入した県・高知市はもちろん、今は反対論を唱えながら当初は絶賛していた議会会派やメディアにも真摯な検証が求められます。

岡村康良・企業団議会議長の話
 企業団はよく頑張ったのではないか。VFMも発揮されず、契約解除は当然だ。

※1 公の業務の資金調達、施設整備、サービスを民間委託する事業。
※2 30年間のPFI契約を包括受託する企業(株主オリックス、竹中工務店ら)。実際の業務は傘下の協力企業を通じて受託企業が請け負う重層的ピンハネ構造。
※3 同水準のサービスをより低いコストで提供すること。(2009年12月6日 高知民報)