2009年11月15日

「子どもを中心に置いた再編論議を」 これからの特別支援教育を考える会が懇談会 

100人が集まった懇談会(11月3日 県立高知女子大学)
高知県教育委員会が県下の特別支援学校再編計画第一次案を公表し、特別支援学校の分校設置や再編・統廃合をめぐる動きが活発化する中、保護者や現場教職員の視点から、特別支援学校と教育のあり方について問題提起をしていくため「これからの特別支援教育を考える会(田中きよむ代表)」が11月3日、高知市永国寺の県立高知女子大学で教育懇談会を開き、県下から保護者、特別支援学校教職員など100人が参加しました。

懇談会に先立ち杉浦洋一・全日本教職員組合障害児教育部長が全国的な情勢を報告。

杉浦氏は全国で持ち出されている併設・併置、分教室について「配置される教員定数に注意しなければならない」と教育条件を切り下げさせない運動の重要性を強調。最近全国的に流行している「キャリア教育」を強調した高等部の「特色ある学校」については、企業就労が可能な生徒だけを集めるために定員枠を設け、それ以外の生徒を足切りする危険性を指摘しました。

また障害種別を超えた新しい学校については「専門性を後退させない教育課程が組めるよう慎重に対応すべきだ」と述べ、特別支援学校の再編計画にあたっては「金を理由にした上からの押し付けではダメ。子どもを真ん中に置いて考えてることが大事だ」と強調しました。

日高養護、山田養護、ろう学校の教員・保護者が、@ろう学校の敷地内に職業教育を重視した日高養護高等部の分校を併置、A安芸郡田野町の県立中芸高の校舎内に、山田養護小中高等部の分校を併置するという再編案に対して、日高・山田の過密化解消は必要性は高いものの、現場教職員や保護者の頭越しの県教委の提案に強い懸念を表明する内容の報告がありました。

この日の教育懇談会には「考える会」の副会長を務める大崎博澄・前県教育長が参加。大崎氏は「特別支援教育が良くならなければ、高知県の教育はよくならない。県教委が出したたたき台をよりよく発展させていくため、『考える会』で理想の案をつくろう」と呼びかけました。

「特別支援教育が良くならなければ高知県の教育は良くならない」 大崎博澄・前高知県教育長の発言
発言する大崎博澄・前高知県教育長

11月3日の「これからの特別支援学校を考える教育懇談会」で、大崎博澄・前県教育長が行なった発言の要旨を紹介します。
 
去年の3月まで県教育委員会にいました。 特別支援教育を受ける子どもたちの教育を受ける権利を守ることはものすごく大事。たくさんの課題があることが、今日の討論の中だけでも分かった。

特別支援学校だけの問題ではなく、特別支援教育も含めて、子ども達の教育を受ける権利を守るために「考える会」を、もう少し幅広く存続させていくことが必要だと思う。

いつも運動をしている方々の集まりだと県教育委員会に見られてしまうような、運動のやりかたを超えたあり方を模索していかないと、広がりがもてない。多くの人の支持が得られないと思う。ウイングを広げた「考える会」の発展を願っています。そういう時に僕でよければ、引き続きこさせていただきたい。

特別支援学校再編について、検討委員会の委員も知らずに、この案が出たというのは僕も驚きましたが、自分の代から山田養護、日高養護の過密は分かっていたことで悩みに悩んでいた。

この案が出たことを非難するより、とにかくたたき台が出た、これを元にしてよりよい案に発展させていく方向で「考える会」で、もっとよい案、理想の姿を作りたい。それから現実の選択肢に移していくという作業をぜひ僕としてはやりたい。それは我々だからこそできる。

教育行政は非常に弱い。県庁の中でも日本の政治の中でも。教育に使う金は無駄金だと思っている方々が、たくさん政治家や役人にいる。教育にこそお金を使わなくてはいけない時だ。

我々でより立派な対案を作り、それを持って教育行政を支援する方向でやっていくことを、僕自身が十分なことができなかった償いの意味で、そういう方向があればありがたい。

特別支援教育が良くならないと、高知県の教育はよくならない。これは僕の持論だ。こういうスタイルの討論がたびたびあって、より多くの人がそれに参加し、特別支援教育の重要性が理解されていく。この方向が大事だと思う。官製の会ではいけない。市民の手でこういうことが行なわれることが必要だ。(2009年11月15日 高知民報)