2009年9月20日

貧困とは=溜めのなさ 反貧困ネット・湯浅誠氏が講演

講演する湯浅氏
「反貧困ネットワーク」事務局長の湯浅誠氏が9月13日、高知市旭文化センターで「現代の貧困」をテーマに講演しました。高知医療生協の主催。湯浅氏の講演のポイントは以下。

@貧困と貧乏とは違う 貧困は単に金がないだけではなく、金銭や人間的ネットワークの「溜め」の無さの中で、社会的に疎外される状況におかれ、あきらめぐせがついて生きる気力が失われていく。

A貧困のイメージ 日本では生存ラインギリギリの極限状態をイメージする人が多いが、OECDの基準では相対的な貧困が問題にされ、3人世帯で月収20万円以下なら貧困世帯になる。貧困観のズレの隙間に落ち込む人が多い。相対的貧困層に対応していく社会的合意をつくる必要がある。貧困はホームレスだけの問題ではない。このような社会では持続できない、未来がない。

B歯止めなき「滑り台社会」 生活保護は最後のセーフティネットと言われるが、それ以前に公的なセーフティネットはない。「最初で最後」。にもかかわらず捕捉率は2割しかない。滑り台の下まで一気に落ちないための階段が必要だ。「ホームレスをやるくらいなら死ぬ気で頑張れ」というような見方があるが、条件をつくらないで「ただ頑張れ」と言っても頑張れない。

日本は子どもの貧困が世界で唯一増えているが、イギリスでは子どもの貧困ゼロをめざし施策を転換した。どちらの社会に展望があるのか。答えは明らかだ。貧困は「可哀相な人」の問題ではない。日本社会の未来、国のかたちの問題。年収300万円以下の家庭を支え、一息付ける対応をするような社会の雰囲気をつくっていくことが大事だ。

湯浅氏の講演を聞いた40代の介護保険ケアマネージャー(女性)は、「困っている人を、しかたがないと置きざりにするのではなく、社会全体で支えることが自分たちのためにもなるということがよく分かった」と話していました。(2009年9月20日 高知民報)