2009年9月20日

灰溶融炉が年度内停止 セメント化へ転換 高知市清掃工場

焼却灰を大分県へ運搬するトラック(宇賀清掃工場
高知市は宇賀清掃工場でゴミを焼却した時に出る灰の処理を、これまでの「灰溶融」方式から、民間会社のセメント材料として再利用する「セメント化」へと全面的に切り替える方針を固め、9月市議会に約8000万円の関連予算を提案しました。市議会で予算が認められれば現在の灰溶融炉の運転は22年3月で停止し、100%「セメント化」が始動することになります。

宇賀工場の操業を開始した14年当時は、廃棄物を出さない「ゼロ・エミッション」の主流は国が誘導策をとっていた灰溶融処理でした。灰を電気で溶融しメタルとスラグ(鉱滓)化して、再利用するシステム。

メタルには価値の高い金属が含まれていることから現在も「山元還元」(※)されているものの、スラグは道路舗装用の骨材としての使途を想定していましたが、公共工事の激減の中で同市三里最終処分場にゴミを埋める際の覆土材としての利用が関の山。さらに最終処分場に埋められるゴミ自体の減少もあって覆土材としての需要さえ減り、処分に困っているのが実情です。

現在稼働中の灰溶融炉は18年4月にスラグが炉から噴出する大事故を起こしました。製造元の三菱重工に瑕疵担保責任を取らせ修理した後には大きなトラブルはなく運転されていますが、その中で当初の計画以上に炉内の耐熱煉瓦の寿命が短いことが判明。

設備の大幅な更新時期を迎えていることもあって、今後も高額な費用をかけてメンテナンスし、大量の電力を使って引き取り手のないスラグを作るより、灰をセメント化していくほうが確実に再利用され、リサイクル、資源活用という面からはるかに効率的であり、さらに年間8000万円もの経費が浮くことになります(市環境部調べ)。

同工場では平成19年からセメント化の試験運転を灰溶融と併行して取り組み、現在ダンプで積み出した灰は、大分県津久見市の太平洋セメントへと運搬しています。三本博三工場長は「安定的に灰を引き取ってもらえる情勢になってきたので、いけると判断している。課題は県内企業の引き取り。そうすれば運搬コストはさらに下がる」と話しています。

※溶かした灰から鉛、亜鉛などの非鉄金属を回収し再使用すること。

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三本工場長との一問一答 

提案予算の内容は?

三本
 今の施設は灰溶融が基本になっている。バックアップとして溶融せず灰を搬出するラインを別途持っているが、長期間連続で運転する仕組みにはなっていないので、これを複線化するもの。ゴミは24時間連続で燃やすので、連続的に灰を出していくには、整備期間が必要。そのために、もう一系列灰を出すラインを追加するものだ。

溶融炉から出るスラグの活用は?

三本 スラグの活用は進んでいない。大半は三里の処分場で覆土材に使っているが、埋めるゴミの量が減っており、埋めるゴミよりスラグの割合が大きくなっている。セメント化なら、確実に市場で利用され、リサイクル、資源活用という点で効率的だ。

将来もセメント会社の引取りは続くのか。

三本 溶融をはじめた頃にはセメント化できる工場が、なかなか見つからなかったのだが、今では各セメント会社で灰を受け入れる稼動が始まっている。19年から試験的に大分県津久見市の太平洋セメントに灰を出してきているが、高知市が出した灰は実は非常に評判が高い。分別によって異物が少なく性状が良い。セメント材料として安定的に処理できることがはっきりしてきた。

今は大分県に出しているが、県内の企業も検討をすすめてくれている。県内企業が受け入れてもらえる状況になれば、さらにコストを下げられる可能性がある。ただ念のために移行後もしばらく溶融炉を残して、経過の観察をするが、現時点でセメント化を選択するほうが、高知市にとってメリットがあると判断している。(2009年9月20日 高知民報)