2009年7月26日

コラム アンテナ 「有料化でゴミは減るのか?」
反対意見が多く出された横浜小の説明会(7月16日)
高知市環境部による「ゴミ有料化」導入にむけた市民説明会が7月14日から始まった(市内43会場で予定)。不正確な地元紙報道を反映して、有料化は既に決まったものという受け止めをしている市民も多いが、実際に有料化の賛否を決めるのはこれからの高知市民の声だ。同市のゴミ有料化をめぐるいくつかの論点について提起したい。

論点1 有料化の理由

岡崎誠也・高知市長はゴミの説明会に先行して行なった「財政再建」説明会で、これまでのハコモノ乱発の穴埋めの財源として「ゴミ有料化」により生じる年間2億円を充当するとしている。

ゴミは人間が生活していく上で必ず生じ、その処理責任は市町村が負うことが義務付けられているが、指定ゴミ袋を買わせ市が収入を得る「有料化」は事実上の「人頭税」に他ならない。県下の市町村で「有料化」を実施していないのは高知市だけという状況を利用し、「とりやすいところからとる」のが「有料化」の本質のように思える(人口が高知市と同規模の全国の中核市41市では有料化は7市だけ)。

ところが市環境部の説明会では「有料化」の理由は「ゴミの発生抑制と減量」としている。有料化によって発生する収入は市財政に繰り入れるが「金が目的ではない」と強調。市長の説明とはズレが生じている。

市長が言うように本当に「金」が目的ならば、「ゴミ有料化」は非常に効率が悪い。環境部が想定しているゴミ袋1リットル1円で計算すると、年間の市民負担の総額は約5億9000万円。袋の製作や印刷コストが1億6000万円、さらに袋を売るコンビニやスーパーのマージンなど保管販売費が1億3000万円。経費合計は2億9000万円にもなる。市民が負担する5億9000万円の実に半分が特定業者に抜かれ、3億円もかけてせっかく作った袋は焼却場で燃やす・・・。「金」が目的というなら、市民負担を最小限にすることを第一義的に考えるのが市政の責任だろう。
 
論点2 有料化でゴミは減るのか

百歩譲って有料化の理由が「金」ではなく、「ゴミ減量化」であるとする。が、ここでも大きな矛盾がある。「有料化でゴミは減るのか」という質問に環境部は「有料化はゴミ減量の唯一の方法ではない」と回答する。同部職員に聞くと「有料化のインセンティブ(動機付け)は、1リットル1円程度では、3カ月ほどで慣れてしまいリバウンドする。大した効果は期待できない」と口を揃える。

高知市のゴミ行政は全国的にも非常に優等生で、市民の高いモラルと協働に支えられ、全国屈指の低コスト(全国の中核市で4番、四国で1番低額)な経費で運営されている。

市民1人当たりのゴミの量は全国平均並だが、雨が極めて多い(ゴミステーションに屋根がないため、雨の日は大量の水分がゴミとして運ばれている)という地域的な特性を考えれば、実質的にはゴミの量も全国的に優秀な位置にいる。市環境部関係者は「不景気による消費の落ち込みもあり、高知市のゴミは年々減っている。平成27年に目標にしている1人1日あたり536グラムは今のままでも実現は可能」と話す。

このように市民と行政の協働でゴミ分別が進み、全国的に先進的な位置にある高知市で今更ゴミ袋を有料化したところでゴミ減量は期待できない。それどころか「有料化」によって、市民のゴミへの高い意識やモラルを「どうせ金を払うなら」とほころびさせることが懸念される。これを最も自覚し、恐れているのは市環境部自身だ。

市の言う「インセンティブ」とはゴミを多く出す者にはペナルティをかけて排出を抑制させようという考え方で、一種の「愚民政策」だ。リサイクルにまわすために奨励しているはずのビニールゴミを出しても「ペナルティ」がかかるのは支離滅裂だし、そもそも商品を生産するメーカーや量販店の包装を改めさせることをせずして、ゴミ減量化などありえない。日々嫌でもゴミを買わなければ生活できない市民にだけ減量の責任を押し付ける発想は筋違いではないか。市環境部の説明会は10月26日まで続く。多くの市民の参加によって、本質がより明らかになる議論を期待したい。 (N)(2009年7月26日 高知民報)