2009年7月12日

特別支援「若草本校・子鹿園分校」統合案早くも撤回 当事者意識希薄な県教委 「知的」対応待ったなし
    若草養護委学校の教室
県教委が取り組んでいる特別支援学校の再編計画で肢体不自由児が通う高知若草養護学校本校(高知市春野町)を子鹿園分校(高知市若草町)に統合し本校とする案が頓挫しました。7月3日に開かれた「第4回高知県における特別支援学校の再編に関する検討委」(是永かな子委員長)の会合で、事実上の計画撤回が県教委側から示されたものです。

県教委は5月18日の第3回検討委に平成23年度からの若草本校・子鹿園分校の統合案を提示していましたが、ここから2カ月もたたないうちの撤回という「朝令暮改」は、県教委がどれだけ真剣に案を検討していたのかを疑わさせるものです。

この統合案は肢体不自由児の学習条件の向上から出発したものではなく、県中央部における知的障害児の受皿としての養護学校の不足を解消するため、「金をかけず」に既存施設を使いまわすため若草本校を転用することが最大の動機。

県教委は統合案撤回の理由を、統合の前提としていた県立療育福祉センター(子鹿園分校に隣接)の将来構想が明確でない(法改正の見通しが不透明なため)からとしていますが、センターをあてにするような考え方に県知事部局の地域福祉部関係者は「療育を教育に従属させるのはおかしい。別個の問題。ごっちゃにして議論すべきではない」(同幹部)と反発。「在宅支援」へのシフトを指向るセンターと、県教委の思惑にはズレがあり、このような状況下でセンターを前提にする統合案検討に意味がないことは明白です。

保護者に無力感

急がれるのは県中央部の知的障害児の受皿作り。独自の課題として対策を打つことは県教委の責任であり、先延ばしは許されません。既存校への併置、旧県立保育短大の活用などあらゆる手立てを考えなければなりませんが、県教委は現状で特段の「青写真」を持っていません。

7月3日の第4回検討委では、山田養護学校のPTA関係者からの「学校は一杯でもう限界。これ以上の受け入れは無理だ。学校としての機能が果たせない」という悲鳴のような訴えに対し、県教委は「議論のたたき台を出すことは難しい」と繰り返すばかりでした。県教委が自ら提起した統合案を撤回し、新たな提案も「難しい」状況であるにもかかわらず、検討委を終了させるスケジュール消化の会議日程は淡々と決定。検討委で一体何を議論させたいのか見えてきません。

このような県教委と検討委の現状に知的障害児を養護学校に通わせる母親は「これまでも知的の子どもの行き場がないことを何度も訴えてきたが、いくら言っても後回しにされるだけ」と無力感を隠しませんでした。

解説 今回の失態ともいえる統合案頓挫の要因は「はじめのボタンの掛け違い」。県教委は知的障害児の受皿を第一義に考えるよりも、既存施設の使いまわしで「金をかけない」ことを優先したため、学校の実態や保護者の切実な要求とかけ離れた緩慢な対応に終始しています。「学テ」順位に目を奪われる中、県教委の弱者への視点の弱まりが懸念されます。(2009年7月12日 高知民報)