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6月26日、医療センターPFIについて発言する尾崎知事 |
尾崎正直・県知事は6月26日の記者会見で高知医療センターのPFI事業(※1)契約の解除について、「施設建設PFIで出たVFM(※2)を運営PFIで食いつぶしている。今(PFI)をやめることができれば損はない。トータルでVFMが出る」と述べました。この発言の裏を返せば、「これ以上PFIを続ければ県民の不利益が拡大する」ということになります。
知事は1月23日の会見では「今の段階でどんな見直しをしてもPFI事業継続が困難だと決めてかかることは軽率」と発言。病院経営に責任を持つ県・高知市病院企業団が「このままではPFI事業を続けていくことは困難」と述べたことを念頭に、契約解除ではなく歳出歳入を再検討した「現行スキーム見直し」という事業継続を前提にする発言をしてきた経過がありましたが、オリックス側がPFI契約の解除を申し出る事態となり、知事も「SPCの存在そのものが足かせ」という認識に至りました。
また知事は「病院PFIの検証は少し落ち着いてやらねばならない」とも述べ、同センターへのPFI事業導入の是非について再度検証する必要性に言及しました。病院PFIに関係する知事の発言の要旨は以下。
尾崎知事 病院PFIというものがどうだったのかという検証は、少し落ち着いてやらなければならないのではないか。国で仕事をしていた時に、いろんなPFI事業にかかわったが、分野ごと個々の施設ごとに効果が違う。医療という分野でどうだったのか。高知医療センターという施設においてどうだったのか。特に後者について、落ち着いて、検証してみないといけない。今の段階で合意解除になれば、施設建設でVFMが出ているのは間違いないので、トータルのVFMは確保され、PFIをやったことで大幅な損をしたことにはなっていない。建設によって生じたVFMを経営で食いつぶしている状況だ。長期間の契約としてのPFI事業がどうだったのかは、もう少し時間をかけて検証しなければならない。
■楽観できない病院経営
契約解除によりSPC=高知医療ピーエフアイ社(※3)という足かせがなくなるとはいえ、今日の国の全面的な医療攻撃の中で、自治体病院の経営が困難を極めることに変りはなく、今後の病院経営を楽観視できるものではありません。
総務省が「経営効率化、再編・ネットワーク化、経営形態見直し」をすすめるために策定を求めている「公立病院改革プラン」は、不採算部門と、多額の施設の減価償却費を抱える高知医療センターにとり大変厳しいものであり、県民の生命を守る中核病院としての役割を同センターが果たしていくためには、国の医療政策の根本的転換が不可欠です。
今回の契約解除に積極的に動いた元木益樹・自民党県議らの本音は、経営形態の見直し=病院を自治体から切り離す独立行政法人化です。しかし自治体病院の独法化は、選挙で選ばれた首長や議会のコントロールから病院が離れることを意味し、採算だけを重視して、不採算部門を切り捨てる病院経営に陥る危険をはらむものであり、警戒しなければなりません。
※1 公の業務の資金調達、施設整備、サービス提供を民間に委託する事業。
※2 同水準のサービスをより低いコストで提供すること。
※3 PFI契約を包括して受託する企業。高知医療ピーエフアイ社の株主はオリックス、オリックス不動産、竹中工務店など。(2009年7月5日 高知民報) |