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病院議会で報告する山崎企業長 |
高知医療センター(高知市池)を経営する高知県・高知市病院企業団(山崎隆章企業長)の企業団臨時議会が6月16日に開かれ、山崎企業長は、企業団とPFI事業(※1)の委託契約を交わしている特別目的会社(SPC)「高知医療ピーエフアイ社(親会社オリックス)(※2)」から、経費節減のためにPFI契約を解除したい旨の提案があり、9月を目処に契約解除に向けた基本合意をめざすと報告。議会も全会一致でこれに同意しました。
同センターのPFI契約をめぐっては、2005年の開院直後から、企業団はVFM(※3)が出ていないとして高知医療ピーエフアイ社と激しい論争を続けてきました。この過程ではオリックス側に譲歩するような知事の不用意な発言など企業団の構成団体である県・高知市には動揺が見られましたが、企業団は粘り強く「SPCに莫大なマージンを抜かれるだけなら、PFIを続ける意味はない。直営に戻すほうが県民利益になる」と主張し、病院議会も企業団を「二人三脚」で後押ししたことが、今回の高知医療ピーエフアイ社からの契約解除の提案につながり、実質的なオリックスの「白旗」で決着がつく見通しになりました。
鳴り物入りで導入された全国初の公立病院PFIは5年で破綻。「規制緩和」では公直営より競争が働かず、企業の儲けと住民の利益は一致しないということが明らかになりました。
SPCの存在そのものが経営の足かせ−−。「病院経営を改善するため、SPCが業務を離れることで経費を削減することも一つの方法」という高知医療ピーエフアイ社自身の言葉がすべてを物語っています。
高知医療ピーエフアイ社は同センターの経営が苦しい中でもマネジメント料と称して年間5億円もの委託費を受け取り自社の利益だけはしっかり確保。企業団との論争ではVFMが出ているかどうかの判断は30年後にすべきであるという論法を展開し、企業団からの経費削減要求を「不当な委託料の削減には応じられない」と高飛車に拒否し、高止まりしている材料費(※4)を引き下げるノウハウも努力もしないまま30年間契約に胡坐をかいていたのが実際でした。
その高知医療ピーエフアイ社が、一転して自ら契約解除の申し出へと転じた理由について企業団関係者は「いつまでも批判されながら居座るより、早く手を引いたほうが得策だとオリックス上層部が判断したのではないか。SPC代表が病院議会に出て追及されることもかなり堪えていたようだ」。
同センターのPFI事業は、90年代以降強まった「規制緩和」、「官から民」、「民間開放」という巨大な流れを、時々の政権と深いつながりを持ちながら推し進めてきたオリックスが自ら乗り出した「規制緩和ビジネス」の典型モデルでしたが、結局は5年で頓挫。同センターを皮切りに全国的な展開を展望したものの、手痛い失敗により、その可能性もほとんどなくなりました。
※1 PFI 公の業務の資金調達、施設整備、サービス提供を民間に委託する事業。
※2 高知医療ピーエフアイ社 30年間のPFI契約を包括して受託する企業(株主はオリックス、オリックス不動産、竹中工務店などオリックスの子会社)。実際の業務は傘下の協力企業に委託し、さらに協力企業から受託企業が請け負うという重層的な高マージン体質。
※3 VFM(バリュー・フォー・マネー) 同水準のサービスをより低いコストで提供すること。
※4 材料費 薬品や医療用材料の費用。同センターのPFI契約ではSPCが費用に占める材料費を23・4%にする提案をしていたが、実際には30%を超えていた。
病院議会「PFI解除協議は攻勢的に」 企業団「強く申し出ていく」
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SPCから契約解除提案があったことが報告された病院議会(6月16日) |
6月16日の県・高知市病院企業団議会でのやりとりを紹介します。
米田稔議員 合意による契約終了といえども、SPC側から提案されたことは、企業団側が今後の協議にあたっては有利になる。攻勢的に話をしていくべきだ。
山崎企業長 交渉にあたっては、これまで言って来たこともあるので強く申し出ていく。
米田議員 (契約解除は)PFIでVFMがでないので、せめて(マネジメント料の)5億円を減らすというような意味だ。(日本共産党は)この契約の債務負担行為に反対したが、病院運営のPFIは官民共同といいながら、たいへんな状況になっている。PFI事業そのものをどうみているのか。
山崎企業長 PFIそのものがダメだったのかどうなのかということは、今の段階では答えられないが、一定の時期には検証して報告したい。
浜川総一郎議員 PFI契約を解除して医療現場に影響はないのか。
堀見忠司病院長 重要な指摘だ。影響を受けることがあってはならない。これまで医療行為は直轄で行なわれてているので、PFI契約が終了しても全く影響はない。
岡田秦司議員 契約解除を歓迎する。民間ノウハウを活用するということだったが、利益をあげるノウハウはあっても、経営を改善するには自ら身を引くしかなかったことは、VFMは発生させることができないということを立証した。企業が利益をあげるためだけのシステムだった。(2009年6月28日 高知民報) |