2009年6月21日

高槻市の支援なく体協「破産」 土佐高に賠償押し付け リストラは既定の路線だった

大阪の財団法人・高槻市体育協会(竹本寿雄会長)が6月10日、大阪地裁に破産を申し立てたことが報じられたことが、関係者に衝撃を与えています。高槻体協は破産の理由を「土佐高サッカー落雷訴訟※の賠償金支払」としていますが、果たしてそうなのでしょうか。問題点を考えます。

昨年9月17日、高松高裁は落雷事故に遭った北村光寿さんをクラブ活動で引率した土佐高と大会主催者である高槻体協に賠償金支払いを命ずる判決を下し、両者には賠償金と遅延損害金合計約4億8000万円の支払いが求められていました。

しかし、土佐高と高槻体協との分担割合は正式に確定しておらず(土佐高は1億6000万円の支払いを高槻体協に要求)、高槻体協は約8000万円を保険金と財産処分で支払っただけで、残金は宙に浮いたままになっていましたが、土佐高側は早期に賠償金を支払う必要があると判断し、分担割合は棚上げにして同校が宙に浮いた8000万円分も北村さん側に立替え、5月29日に支払いを終えています。

土佐高関係者は「体協の活動を妨害するつもりなどまったくない。何年かかってもよいから、少しずつ返済してもらえればよかった。分担額が確定もしないうちに一方的に破産するとはどういうことなのか」と高槻体協の対応をいぶかる声が聞かれました。

なぜ強引ともいえる「破産」なのでしょうか。最大の問題は高槻市(奥本務市長)の態度。高槻体協に支払い能力がないことは明らかであるにもかかわらず一切の支援を拒んでいます。高槻市スポーツ振興課の岸本広次主査は高知民報の取材に対し「破産は本市の判断ではない。あくまでも任意の団体である財団の理事会が決めたこと。本市は当事者でないので公金を入れる根拠がない。土佐高と体協の間でどのような話があったかは把握していない」と回答しました。

しかし、高槻体協に同市は出資こそしていませんが、年間2300万円もの補助金を出し、専任の事務局長1人、臨時職員2人の体制で市立文化会館内に事務局が置かれるなど、高槻市と一体でしか存在しえないのが高槻体協の実態であり、破産を申し立てた判断に市が関与しないなどということはありえません。

重大なのは高槻市が現在、懸命に取り組んでいる「行財政改革」で、同体協への補助金が槍玉にあげられ、リストラ候補とされていたことです。

平成19年の同市行革推進本部「業務精査評価」では市自らが、「(補助金とは)事業の一部を補助する目的であるにもかかわらず、厳密な意味合いでの事業補助とは言いがたい」と同体協が「市丸抱え」になっていることを指摘。「本市と体協との関係を見直す中で、全般に亘る事業整理が必要」と結論付けており、高槻体協のリストラは既定の路線でした。今回の賠償をきっかけに一気に団体を整理したと考えれば、不可解な破産の選択も辻褄があいます。

土佐高の立替払いをいいことに、「破産」までさせて負担を押し付ける高槻体協と高槻市のやり方は、両者が事故の責任を真剣に受け止めているのかどうかさえ疑問を抱かせるものです。

土佐高校の池上武雄校長の話 「北村君は本校の生徒であり、今後の生活のためにも賠償金を早く支払うべきだと考えて立替えて払った。高槻体協には社会的責任を果たしてもらえることを期待していたが大変残念だ」

※1996年当時、私立土佐高校生だった北村光寿さんがサッカーの試合中に落雷に遭い肢体不自由・視覚を失う重い障害負った事故の責任を問うた訴訟で、08年9月、高松高裁は土佐高と高槻体協の過失を認め、雷の予見は可能であったとして賠償を命じる判決を下し、確定した。(2009年6月21日 高知民報)