2009年6月14日

コラム アンテナ 「追手前高PTAの試み」

県立高知追手前高校PTAで、ひとつの試みが始まった。その試みとはPTAが会員から集めている「諸会費」に減免制度をつくることができないかというもの。県立高校の場合、きわめて限定的で不十分ではあるが、それでも一定の条件を満たした家計の苦しい生徒を支援するため授業料の半額又は全額を免除する制度がある。

しかし子供を高校に通わせるためにかかる費用は授業料だけではない。現実には制服、教科書、体操服、剣道の面など武道の道具、修学旅行費、卒業アルバム代・・・。そして「PTA諸会費」、「ホーム費」などあれこれの名目で相当高額な金が集められている。

これらの費用は授業料が免除されている生活保護世帯でも、市町村民税が非課税になるギリギリの生活をしている世帯であっても、一律に支払わねばならず、所得の低い家庭ほど重くのしかかる。

そこでPTAとしても経済的に困窮する家庭の生徒の学習権を保障する観点で、負担を軽減するために「諸会費」を見直し、授業料減免に連動する規定がつくれないものかというのがその趣旨である。

減免すれば当然収入が減るわけであり、PTAも身の丈にあった活動へと支出のあり方を見直さなければならないだろうし、公費で支払うのが当然であるべき学校施設の修繕費のようなものまで何でもかんでもPTAの負担に押し付けるような慣習も改めさせなければならない。

県教委高等学校課に聞くと、「PTA諸会費」を減免している高校は県内にはないとのこと。追手前高PTAでは次年度の予算に反映させるための検討作業に入るとしているが、県内他校に先んじての取り組みであり与える影響も大きい。PTAとはいえ実際の見直しにはT=管理職や事務方の果たす役割が決定的であり、他県の先進例にも学び、立派な制度をつくっていただけることを期待したい。

そもそも高校の学費は無償というのが世界では圧倒的で、高額な授業料の上に、重ねてこれでもかとばかりに保護者負担をさせる日本の現状は異常としかいいようがない。教育費の負担軽減の議論は、日本の教育さらには保護者にも深く浸透している「自己責任論」とのたたかいである。教育は「私事」ではなく、社会全体で支えるという方向へ転換を促す議論を、多くの人々を巻き込んですすめていくことが肝要だと痛感する。「PTA諸会費」の議論が、その端緒になればと願う。(N)(2009年6月14日 高知民報)