2009年6月7日 |
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コラム アンテナ「電気自動車は本当にクリーンか?」 | ||
三菱自工が開発した軽四輪をベースにした電気自動車に、行政や企業関係者、マスコミなどを実際に乗せ、性能を実感させることで理解を深めさせることが目的だ。 三菱自工の説明によると、車両価格は約430万円。国の補助金が130万円ほど出るので実質は300万円程度。最高速度130キロ、航続距離160キロだが、エアコンを使うと100キロに落ちる。充電は家庭用100Vで可。完全に残量のない状態から14時間、200Vなら7時間で充電が完了する。 本来のエンジンスペースには電気モーターが置かれ、床下に畳一枚ほどのリチウムイオン電池を敷き詰めている。エンジンがないためにガソリンタンク、インジェクションやターボ、排気管、ラジエターもミッションもなく部品数は大幅に減少する。 試乗した感想は、静かで加速がよくキビキビした走り。数分間の試乗の限りでは実用上十分満足のいくものであった。ただ電気が路上で切れたらコンセントのあるところまでレッカー移動するしかないし、70万円もする充電池の寿命(関係者に聞くと8年と言ったが、充電回数の説明はなかった)など、実際に使うとなった時にはよく分からないことも多い。 何より電気自動車が本当に環境に低負荷で、低炭素社会に貢献するもなのかといえば実際はかなり疑わしい。 「エコ」と名が付けば何でも優遇する国策の流れの中、生き残りを探る自動車産業、火力から原子力とプルサーマル発電へとシフトをすすめる電力会社のプロバガンダを割り引かなければ実際の姿は見えてこない。 走行時には出なくても、火力発電所で発電する時には二酸化炭素は発生するし、内燃機関であるガソリンエンジンより効率はよくても送電ロスも大きい。バッテリー製造や廃棄を考えあわせると、どこまでメリットがあるのかの判断は難しい。まして原子力発電の廃棄物処理に要するリスクと莫大なコストを含めて考えれば「エコ」などと言えるものではない。 昨春、ガソリン税の暫定税率撤廃が問題になった時、政府は「ガソリンが安くなると環境破壊になる」という理屈をつけていたが、今は「高速道路1000円」政策で二酸化炭素排出を奨励するような政策をとり、そのあおりで最も環境に低負荷なはずの船や鉄道に打撃を与えている。政策に論理的な一貫性はなく、まじめに環境のことなど考えているとは思えない。一貫しているのは自動車産業のバックアップだけだ。 県環境関係部門から試乗会に参加していた職員が「電気自動車は二酸化炭素が出ない」と何度も言っていたので「発電時に出る二酸化炭素や原発の廃棄物はどう考えるのか」と意地悪く聞いてみたが、噛み合ったコメントはなかった。 当たり前だが一番の「エコ」はなるべく車に乗らないことに尽きる。行政がやるべきは電気自動車の普及より、徒歩や自転車、公共交通を利用できる環境を整備し誘導していくことだと思うのだが。(2009年6月7日 高知民報) |