2009年5月31日

高知市が隣保館体制を大幅縮小 「市民会館」正職員配置18→4人へ 4ブロックに集約
22年度も正職員が配置される長浜市民会館

5月19日、高知市市民生活部は同市議会行財政特別委員会に「市民会館」=隣保館への職員配置を平成22年度から大幅に削減し、館機能を縮小する提案を行いました。同和関連法が失効して8年。遅きに失したとはいえ、高知市同和行政の中核を占めてきた「市民会館」の存在意義を「自己否定」するような大幅縮小に舵を切ったことは、高知市の同和行政にとって重要な転換点といえます。

高知市には現在、市内13カ所に「市民会館」=隣保館が存在しています。運営は市直営で、部落解放同盟が、あからさまに私物化しているような実態はありません。これまでの部分的見直しによって「市民会館」の人員配置は暫減してきており、、平成21年度の常駐職員は、正職員18人、市職員OBである再任用職員9人、臨時職員1人(5月現在)が配置されています。

新たな縮小案では、直営を堅持し、13の館数は減らさないものの、正職員4人、非常勤・再任用職員14人にする内容。市はこれにより人件費を年間7860万円節約できるとしています。

岡崎誠也市長は5月20日、高知民報の取材に対し「朝倉、小高坂、長浜、春野の4ブロックに統合していく方向。正職員の配置された4つの拠点館と、非常勤職員が配置されるサテライト館のような位置付けで集約していく。これらは解同市協にも事前に話をして理解してもらっている」とコメントしました。

高知市が自ら決めている21年度末の「同和行政見直し」作業にむけた庁内論議が始まる前に、「市民会館」の人員配置の大幅削減だけを唐突に打ち出したことに、市同和行政担当者や「市民会館」関係職員には衝撃が広がり、「国の隣保館運営補助金が廃止されてからと思っていた。想定よりかなり早い」、「この体制では隣保館としての機能は維持できない」などという戸惑いの声が聞かれました。

「一地区・一館」体制の事実上解体 解同癒着体質はそのまま

岡崎市長は、この時期に、このような提案をなぜしたのでしょうか。最大の要因は今、市長が市内各地で取り組んでいる「財政再建のための説明会」。大型公共事業乱発の結果、財源が不足するために固定資産税などの増税を求める内容ですが、執行部は市民から「増税の前に市役所の仕事の無題を省け」と猛烈に突き上げられており、「汗をかいた」実績をつくることが迫られていました。

市政の中で最も人員配置にバランスを欠いていたのが「市民会館」の職員配置。多数の市民が活用している「ふれあいセンター」には正職員配置がないにもかかわらず、「市民会館」には18人もの正職員を配置していた「同和の聖域化」には、市役所内部にも批判が強くあり、「財政再建」を乗り切るためには「背に腹はかえられない」という判断に執行部が追い込まれたといえます。

今回の「市民会館」職員の大幅削減案は、これまで「部落差別のきびしさ」故に、「市民会館」=隣保館の体制縮小を拒んできた高知市の理由付けの破綻にもつながっていくものです。

13館の「市民会館」は、旧同和地区に対応して「一地区・一館」が配置されていましたが、非常勤職員が1人配置される館は、週30時間以下という勤務時間の制限もあり、「実際には鍵を開けるだけの留守番しかできない。相談活動ができなければ隣保館とはいえない」(市の同和行政に詳しい職員)というように、事実上の「一地区・一館体制」の解体ともいえるものです。

「部落差別がきびしく、隣保館活動が必要」であるならば、どの地区にも隣保事業を担う人員配置が必要なはず。朝倉総合、小高坂、長浜、弘岡中の4館だけを「差別」して正職員を配置することは、市の言う「部落差別のきびしさ」に軽重をつけるに等しく、市同和行政関係者からは「なぜこの4館なのか。理念なき撤退だ。隣保事業をすべて返上したほうが筋が通る」という批判が聞かれました。

ではなぜ4館だけの正職員配置か。同和・人権啓発課長では「弘岡については合併の経過があるため。旧高知市の3館は規模が大きいから」とコメント。

建物の面積を比較すると、正職員が配置される館は確かに面積が大きいのは事実ですが、本質的には市長のコメントにあったように、市議会に公表するより前に話をつけた解同高知市協が承諾している館であるということに尽きます。過去に有力な市議が出た地域であったり、今も「23デー」(毎月開かれている狭山裁判闘争集会のこと)に取り組んでいるなど解同組織の活動が活発な地域の館には正職員が配置される一方、影響力低下の著しい自由同和会系組織の地元の館はすべて非常勤化されるなど、解同市協が許容する範囲の削減でしかないのが実態であり、高知市市同和行政の最大の弱点である主体性を欠く姿勢には何ら変りがないことが示されています。(2009年5月31日 高知民報)