2009年5月24日

コラム アンテナ 「命の道とは何なのか」
あいさつする安芸市長 三翠園ホテル(5月10日)
国が「凍結」した「高知南国道路」などの「凍結解除」と、「地域の実情を反映した事業評価」を求める官製集会「道路整備促進県大会」が5月10日、高知市内のホテルで開かれた。市町村長、尾崎正直知事、自民党の国会議員や県会議員などに加え、国交省四国地方整備局長ら国の役人も出席していた。

大会では尾ア知事が「凍結は3・31ショックだ。単純な計算式で(国は)何を言うか。『命の道』を常々訴えてきたが、命に関わる事項をたかだか三つの機能を盛り込んだB/Cで評価できるわけがない」と語気を強め、室戸市の消防関係者、中土佐町の女性が道路の整備を求める報告を行った。

しかしながら、いくら話を聞いても「高知南国道路」が「命の道」であることを実感させるような話が出てこなかったというのが実感である。

現状の国道55号が室戸からの救急搬送に事欠くという報告も、よく聞けば夜須以東の話であり、「高知南国道路」と直接結びつくものではなかった。

尾ア知事は、あいさつの中で「抽象的に言うだけでなく、命の道であるという側面を、正確に国民の誰が見ても分かるように伝えることを追求していくことが大事だ」とも述べていた。

この知事発言にはまったく同感であるが、そうであるなら、今の「南国高知道路」の「凍結解除」を求める主張が、農村部の生活道路と都市の高速道路を意図的に混同させるような一種の誤魔化しであり、いかに説得力に欠けるかを自覚してほしい。

四車線道路の上に、わざわざ5キロメートルもの長い高架橋をかけて二階建てにする極めて高コスト(総事業費1300億円)な道路では、他に代替手段のない「命の道」という定義とは程遠い。このような「高知南国道路」の実態が知られていけば、県民からも批判の声があがるのは必至だ。

国交省四国整備局の木村昌司局長は「B/Cの便益と事業費を見直し速やかに再評価する」と述べていたが、「高知南国道路」の場合、最もネックになってくるのは交通量ではなく、構造物が多いために跳ね上がるコストであろう。今こそ「1・5車線」を提起した高知県が、「高知南国道路」でも、大胆な提起をすべき時ではなかろうか。(N)(2009年5月24日 高知民報)