2009年5月3日

1300億円 高架高速が本当に必要か 五台山にトンネル4本 「高知南国道路」凍結問題
高知南国道路」のルート
高知市高須新町 この周辺も2階建てとなる。正面の五台山山腹にはトンネル4本
国土交通省が「高知南国道路」(※1)の工事を「凍結」したことが県内関係者に波紋を広げています。尾崎正直・県知事は「便益に『命の道』の要素が考慮されていない」と国土交通副大臣や同省幹部に面会して凍結解除を求め猛然と抗議。県議会の代表者も陳情に上京し、地元紙も同様の立場でキャンペーンを展開していますが、果たして「高知南国道路」は県民が求めている「命の道」なのでしょうか。

「高知南国道路」は高知自動車道高知ICから南下して五台山を貫通し、現国道(南国バイパス)と並行する高知空港までの15キロメートル。

五台山の南側に建設される予定の高知南ICと高知IC(JCT)間は、高知新港まで続く4車線(今は五台山トンネルが1本しか抜けておらず暫定2車線)の県道と完全に重なるルートで、県道の上に長大な高架橋をかける構造。五台山の山腹には4本もトンネルが抜かれることになります。

「高知南国道路」に代わる道路は現国道55号線(南国バイパス)、海岸を走る県道春野赤岡線、南国市立田を通る旧道、改築中の国道195号線(あけぼの街道)など。南国ICへアクセスする高知東道路も整備され、代替ルートは多くあります。

高知県が主張している『命の道』は、災害による通行止め時に代替ルートがないことを便益にカウントさせることが主要な柱だったはず。なぜ「高知南国道路」が「命の道」に該当するのでしょうか。

4月24日、工事の凍結解除を求める陳情について審議した県議会企画建設委員会で中根佐知委員(共産緑心)は、「高知南国道路は『命の道』とはいえない。『命の道』というなら安芸以東を優先すべきだ。またコスト縮減のために工法などを見直すべき」と主張しましたが、他の委員からは「『命の道』を考慮していないB/C論(※2)に乗ってコストを下げるため、四車線を二車線にするなどはすべきではない」、「高知ICから高知空港までは高知の顔。絶対に四車線が必要」など、コスト縮減のための見直しさえ認めない強硬な意見が大勢を占めました。

※1 計画決定は平成元年。総工費1300億円の巨大プロジェクト。
※2 道路整備の便益とコストの割合を求める計算式。高知南国道路は0・9で1を下回った。

野放図でバブルな計画

解説 「高知南国道路」は公共事業が野放図に展開されていたバブル期に計画が決定され、@主要港、空港を高速で結ぶ、A高速広域8の字ネットワーク、B渋滞解消などを目的に、1300億円の巨費を投じる計画です。

とりわけ高知IC(JCT)から高知南ICまでの区間は、2階建で(部分的には3階建てになる)、四車線の県道に文字通りの「屋上屋」を重ねる構造。県道路課でさえ、2階建区間の工事は後回しにして、高知南IC以東を優先するよう国に要望するなど、必要性は疑わしいものです。

「高知南国道路」の1300億円の総工費のうち、高知県がこれままでに支払った直轄負担金の累計額や、計画が完成された場合に、支払わなければならない残額について、県道路課に問い合わせても「不明」。国交省土佐国道事務所も「精査しているところで公表できる段階ではない」などという回答しか戻ってこない有様で、「丼勘定」体質を露呈。県民に説明するための議論の土台となるデータすら分からないまま声高に「凍結解除」だけを求めているのが現状です。バブル期の遺物ともいえる野放図な計画に、「命の道」と称して固執する硬直した姿勢は、「命の道」の論拠を失い、県民が切望する真に必要な道路整備の促進に逆行するものといわなければなりません。(2009年5月3日 高知民報)