2009年4月17日

市営住宅の家賃減免制度を母子世帯に適用せず 障害者も一部だけ 高知市
障害者用住宅などが入る高知市営住宅(高知市鏡川町)
高知市が市営住宅の家賃=使用料の減免規定を定めた取扱要領(平成10年4月1日制定)に、市町村民税の非課税世帯(※)に対して使用料の4分の1を減免する規定があるにもかかわらず、業務を担当する住宅課が母子世帯などを減免対象にしない運用をしていることが明らかになりました。平成20年度包括外部監査によって一部が指摘され、4月27日には、このテーマで市議会建設委員会が開かれることになっています。

同市の取扱要領3条(2)では、地方税法295条第1項による市町村民税の非課税世帯のうち、市長が認めた場合には使用料減免をするとされています。

19年度の実績では、上記の3条第1項で20人(総額885000円)が減免を受けていますが、いずれも障害者。寡婦や寡夫について減免されている事例はゼロでした。同じ法令で規定されている非課税世帯でありながら、障害者と母子などの世帯で減免の取扱いが異なっていました。また障害者も本来対象になるべき世帯の一部にしか減免が適用されていないことから、制度の周知や職員の取扱いに問題があったことが考えられます。

吉永清次・同住宅課長は「異動で経緯を知っている職員が少なく、過去の課の考え方について精査をしているところだ」とコメントを避けましたが、ある住宅課関係者は「公営住宅法や条令には『病気や特別の事情がある場合に減免できる』とされていることから、『病気』というところで障害者に限って減免してきたように思われる。住宅の使用料は所得と応益(住宅の広さや立地など)によって決まるので、母子世帯を減免対象にする理解がなかったか、積極的に周知する考えがなかったのではないか。今回の指摘もあったので、今後は減免の対象にして、周知していく」と話していました。

生活保護を受けないで市町村民税が非課税になっている世帯は、実際には生活保護水準を下回るギリギリの生活をしています。母子世帯や障害者の住宅という最も基本的な生活基盤を積極的に下支えすることこそが、市の住宅行政に求められている重要な役割ですが、高知市の対応は極めて冷淡な運用になっていました。

今回、外部監査報告が指摘したのは「母子世帯住宅」(平成19年度に151世帯に限った調査)だけですが、実際には「氷山の一角」で、母子世帯、障害者世帯ともに、市営住宅全体では相当多数の「対象者」がいることが予想されます。

生活保護を受給すれば家賃が公費で支給され、一方で市営住宅の約4割を占める旧同和住宅では、かつて「同和減免」で独自の減免制度があったことから、「生保」と「同和」という大きな制度の谷間の「声の小さな」人たちへの支援策を真剣に考えることへの市政の弱さが問題の背景にあるといえます。

障害者単身用の市営住宅に19年から入居したYさん(42歳)に話を聞くことができました。Yさんは車椅子を常時使用している1級の重度障害者。月収は約84000円の障害者年金と27000円の障害者特別手当の約11万円。この中から食費、国保料、ヘルパー代、家賃などすべての生活費をやりくりしています。市町村民税は当然非課税ですが、住宅使用料の減免制度があることは知らされておらず、月額18200円の使用料を支払っています。「毎月一番きついのは移動用のタクシー代。3万円ほどかかる。家賃を減免してくれると知っていればもちろん申請した。制度があるのになぜ知らせてくれないのか」と話していました。

※生活扶助受給者又は障害者、未成年者、寡婦若しくは寡夫で前年所得が125万円以下の者 (2009年4月17日 高知民報)