2009年3月22日

コラム アンテナ「高知競輪の怪」
条例や規則の裏づけがないまま、密室の「交渉」で決められていた離職餞別金
松尾前市政の乱脈な箱物ラッシュのあおりをうけてまさに破綻寸前に追い込まれている高知市の財政にとって、70億円余もの累積赤字を抱える高知競輪の処理は極めて重い課題となりのしかかっている。

ならば競輪などさっさと止めればよさそうなものだが、廃止となると「貸付金」が回収不能となり、たちまち高知市財政が破綻することになるので、やめるにやめられない。いつ爆発するか分からない時限爆弾を抱えたような状態なのである。

そもそも「公営」であればギャンブルが許されるのかという根本問題はあるのだが、それはさておき黒字で市財政に貢献しているうちはよいとしても、赤字となり税金を継ぎ足してまで公が賭博行為を支える理由などない。

高知競輪の経営の急所が、車券販売や払戻金の事務を取り扱う従事員の人件費の高騰であることは従前から言われてきた。従事員を束ねる競輪競馬労組が、部落解放同盟高知市協の強い影響力をバックにした密室の交渉で、高知市を従属させていくという構図が長年にわたって温存され続けてきたことがその背景にある。

現在開催中の高知市議会3月議会には、この従事員の「退職金」である「離職餞別金」制度の廃止にともなって2億6000万円の餞別金を一括して前払いする補正予算が提案されている。支払いの最高額は約360万円。従事員は「日雇い労働者」であるというが、夏冬の一時金とあわせ世間がイメージする「日雇い労働者」とはかなり様子が違う。

このような従事員の待遇や賃金の根拠はどこにあるのだろうか。市公営企業課に従事員の身分について問うと、「市の臨時職員のようなもの」であると言う。ならば条例や規則があるはずなので人事課に聞くが「従事員のことを定めた条例や規則はない。人事課では分からない」の一点張り。公営企業課も「条例や規則は聞いたことがないし、辞令もみたことがない」という。

少し待ってほしい。臨時や非常勤職員であっても公務員であれば、条例規則にもとづかない賃金の支払いができないことは常識だ。もし公営企業課の言うことが本当であれば前述の従事員の「離職餞別金」や、賃金・一時金は労組との交渉の場で条例規則の裏づけのないまま「お手盛り」で決めていたことになる。従事員とは誰に雇われた、どういう身分の人たちなのかという根本問題すら、はっきりしないまま、2億6000万円もの餞別金を支払うことが許されるのだろうか。

この問題を審議した3月6日の高知市議会経済文教委員会で、解放同盟と関係の深い市民クラブの岡崎邦子議員が「高知市の都合で餞別金制度を廃止するのだから、割り増しをして払うべきだ」と語気を強めて執行部に迫っていたことも記しておきたい。(N)(2009年3月22日 高知民報)