2009年3月1日

高知医療センター病院議会 「PFI契約解除も視野」 予算に付帯決議 オリックスとのきしみは依然深刻
PFI契約解除を視野に入れた対応を全会一致で決議した(2月18日) 
経営が深刻化している高知医療センター(高知市池)を経営する高知県・高知市病院企業団(山崎隆章企業長)の企業団議会(樋口秀洋議長)が2月18日に開かれ、関連予算を全会一致で可決しましたが、企業団とPFI事業(※1)を委託している特別目的会社(SPC)「高知医療ピーエフアイ(親会社オリックス)」の軋みはいっこうに収まる気配はなく、「SPCに変化が見られない場合、PFI事業を継続しない選択を視野に入れた検討が求められる。企業団は不断の決意を」という決議が予算に付帯されるなど、「火種」はくすぶり続けたままです。

同企業団は、同センターの経営を改善するために「これ以外には選択肢はない」という強いスタンスで昨年12月、SPC・オリックス側に6億円の経費削減を要請しました(SPCが契約時に確約したVFM<※2>が発揮されていない材料費などの圧縮を求めるもの)が、SPCは昨年12月9日、「不当な企業団の経費削減要求は認められない」などと回答。

今年1月20日には尾崎正直・高知県知事と岡崎誠也高知市長がオリックス社を訪問しましたが、この場で知事は「6億円削減が難しいのであれば、現行スキームを見直す必要がある」と発言しました。構成団体のトップである県知事が、企業団との合意もないまま不用意に「スキーム見直し」を口にしたことから、事態は混沌としているのが現状です。

当面の運転資金不足は県・高知市からの合計約7億6000万円の借り入れでしのぎ、1年間かけて事業のあり方を、企業団とSPCが経営企画協議会で協議していくことになりますが、課題が先送りされただけに過ぎません。

企業団がSPCに反論

同企業団は2月16日付文書でSPCの「不当な削減要求は認められない」という回答に全面的に反論しました。

その内容は「開院から4年間が過ぎたにもかかわらず、材料費が非常に高額のためPSC(公が自ら調達した場合)よりもコストが大きく上回っており、事業期間全体を通じたVFMが見込めない。SPCが契約時に応募したコストとあまりにも乖離している。SPCにはVFMを実現する責務がある。応募提案のVFMは実現の意思もなく提案されたのではないか」というもの。現行スキームのもとでSPCに責任を果たさせる観点で書かれています。

2月18日の企業団議会の質疑では知事の「スキーム見直し」発言について、「これまで企業団や議会が言ってきたこととは離れている。許されない」(米田稔議員)との指摘が。山崎企業長は「単なる歳出歳入の見直しだけではなく、PFI事業そのもののスキームも考えなければならない。付帯決議を重く受け止め、重大な決意で臨む」と答弁しました。

樋口議長の話 SPCのずさんさ、無責任さがはっきりした。どうなってもSPCが利益を確保できるシステムに安眠を貪っている。泥沼のように底が深く、法的手段でないと決着はつかないだろう。

※1 公の業務の資金調達、施設整備、サービス提供を民間に委託する事業。同センターでは危機的な病院経営にもかかわらずSPCは黒字を計上している。

※2 @同水準のサービスをより低いコストで提供すること。

答弁する間渕高知医療ピーエフアイ社長
SPCの無責任さうきぼり
同日、企業団議会に引き続いて開かれた協議会ではSPC「高知医療ピーエフアイ」間渕豊社長と議員との間で激しいやりとりがありました。

元木益樹議員(自民) なぜ経費の削減要請を断るのか。 

間渕社長 これまでも委託費削減を実行してきたが、これ以上は難しい。

元木議員 昨年12月9日付文書でSPCは「20年度予算でSPCが見積った材料費を企業団が削減したのは予算措置違反」と言っている。21年度予算の材料費は26・3%。企業団はSPCと相談してないと言っているが、いくらで出すつもりだったのか。

間渕社長 今、作業中なので答えられない。

元木議員 これが予算措置違反になるのか。

山崎企業長 そうは思わない。昨年10月27日までに材料費の見積りを出すようにSPCに文書で通知しているが、見積りが出てきていない。

岡田泰司議員(共産) 21年度の材料費の見積もりはないのか。

間渕社長 今作業をしているところだ。

岡田議員 予算議会があることが分かっていながらなぜ出さないのか。仕事をしていない。

間渕社長 20年度には数字を出した。

岡田議員 そんな話ではない。企業団に反論しながら、今日の議会に材料費が提案されるのになぜ出さないのか。契約違反ではないか。

間渕社長 早急に提出する。

岡田議員 もう議会は終わった。何を言っているのか。SPCの仕事ができていない。重大問題だ。

元木議員 「協力企業に断られたから削減できない」でいいのか。

間渕社長 6億円の減額は大きすぎる。今の業務水準を維持したままでの経費削減は難しい。

米田稔議員(共産) 自ら提案した事業が3割もできていない状況を5年も放置して、今の水準を維持するならできないとは無責任だ。安かろう悪かろうではないか。(2009年3月1日 高知民報)