2009年2月15日
「省エネ」がいつのまにか「原発」に・・・ 原子力発電体感イベント「エネルギーワールド」に12800人
会場入口にはエネルギーワールドのゲートが(2月8日、ぢばさんセンター)
2月7、8日、高知市布師田のぢばさんセンターで開催された省エネルギーをテーマにした「エネルギー&エコロジー博覧会」(経済産業省四国経済産業局主催)会場で、子供を原子力発電に馴れさせ、抵抗感をなくすためのPRイベント「エネルギーワールド」(※)が抱き合わせて開催され、2日間で12800人が参加しました(四国経産局発表)。会場は両イベントに一応の間仕切りはあるものの、省エネ体験イベントに参加した子供が自動的に原発のPRコーナーに「対流」する配置になっており、「省エネ・エコロジー」から「原発」へと子供を意図的に誘導するイベントになっていました。
「エネルギーワールド」は、資源エネルギー庁、四国経産局主催。原子炉型トランポリン、原発プラモデルを作る工作教室、「発電戦隊エネレンジャー」ショーなどで、年齢の低い子供に原子力やプルサーマル発電への親しみを「刷り込む」ことを主眼にしています。
「エネルギー&エコロジー博」(以下エネ博)は四国を一巡して省エネをアピールすることが目的で、これまでに松山、高松、徳島各市で開かれていますが、いずれも原子力発電に関連する内容は無し。高知だけが唯一「エネルギーワールド」と抱き合わせになっています。四国経産局の担当者は「予算がカットされたので、両イベントを組み合わせることで広報の相乗効果と予算の節約を狙ったのが目的。高知県だからやったというわけではない」。
高知会場での「抱き合わせ」について、エネ博に参加し会場で節電コンテストの結果を発表した「県地球温暖化防止活動推進センター(えこらぼ)」から、「エネ博に参加することで原子力発電に賛同しているように受け取られかねない」という懸念の声があがっていました。エネ博当日、会場で「えこらぼ」メンバーに聞いたところ、「私たちは電気をなるべく使わないことで地球環境を考えていくために参加したが、会場が原子力発電の宣伝と同じということには、やはりすっきりしない思いはある」と複雑な受け止め。
「エネルギーワールド」会場には就学前や小学校低学年の子供をつれた母親の姿が目立ちました。「小学校で配られたチラシを見て参加した。省エネ体験のイベントだと思って来たので、原発関連の出し物があることは知らなかった。子供目線で見たので、展示の内容についてはあまり印象にない」(小学生男児を連れた30代の母親)
「保育園にチラシが配られたので来た。環境の催しと思っていたので、原発のことは知らなかった。環境を考える上で知らねばならない情報かもしれないが、環境のつもりできたら、いつのまにか原発というやり方はどうかと思う」(保育園児を連れて「プルサーマル・くるくるツアー」をしていた20代の母親)
「エネルギーワールド」のブース出口では火力、水力、新エネルギー、原子力発電のひとつを子供に選ばせる「シール投票」を実施していました。イベントを委託されている「(財)大阪科学技術センター」の係員は、「小さい子供が参加しているので、どこまで分かっているのかと言う問題はあるが、全国どの会場でも原子力を支持する投票が一番少ない。放射能アレルギーは子供にも強い」。 「だからこそ、もっと広報が必要なんです」。(四国経産局担当者)
※資源エネルギー庁と経済産業省の原発広報部門の主催。「青少年を対象にエネルギーとりわけ原子力についての関心の醸成や理解を深めることを目的」(企画趣旨)にしている。原子力発電や「核燃料サイクル」、プルサーマル発電の優位性や安全性を一方的に「体感」させるイベント。各マスコミ、高知県、高知県教委、高知市、高知市教委などが後援した。(2009年2月15日 高知民報)
原子力発電の効率の高さを示す展示。矢印の部分の1グラムのウランでドラム缶10本と同等の発電ができるとしているが、ウラン精製や廃棄物処理に要するエネルギーは無視されている
左上がエネルギーワールドのブース。エネ博会場の大半を占めていた
プルサーマルくるくるツアーをする親子連れ
発電を模したボールをロボットでつかむゲーム つかみやすいように原発(黄色)が一番大きい
子供に人気の原子炉トランポリン