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知事と面談する森田益子氏ら。応接室は満員に(1月28日) |
部落解放同盟同盟高知市連絡協議会(竹内千賀子議長、以下解同市協)が、尾崎高知県政に急速に接近しています。橋本前県政は「闇融資事件」(※1)の反省から平成13年度途中から全国に先駆けて同和行政を基本的に廃止。解放同盟をはじめとする同和団体との関係でも毅然とした対応を貫いてきましたが、8年がたち職員に事件の風化が進む中で、19年12月の知事選挙で解放同盟の推薦を受けた知事が誕生。県政と解放同盟の距離に変化が生じ、13年以降続けてきた県の「同和対応」にも陰りが見られるようになってきています。
1月28日、県庁第二応接室で、解同市協と表裏一体の関係にある高知市労働事業協会と尾崎正直県知事、十河清副知事の「懇談」が行われました。事業協会側は森田益子顧問(元県議、解同市協前議長)、竹内千賀子・解同市協議長(高知市議)、竹村美也子・元高知競輪競馬労組委員長、山戸庄治・解同県連書記長、坂本茂雄県議、五島正規・元衆議院議員など30人以上。入室する森田氏に「知事に何を要請するのか?」と取材しましたが、回答はありませんでした。
県秘書課の担当者は、事前の確認以上に詰めかけた人数に「こんな話は聞いていない」と憮然とした表情。「高知民報」は解同県連の山戸書記長も入室していることを指摘して、「労働事業協会は解放同盟とイコールだ。同和団体の対応をなし崩しにするのはおかしい」と、その場で同和団体との交渉のルール(※2)から逸脱した対応を正すべきだと申し入れました。
県秘書課は「今日は雇用問題の話と聞いている」と「同和」ではないということを強調しましたが、「取材に入ってもらって構わない」と報道関係者の入室を認め、高知新聞と高知民報が取材しました。
■問われる「県政改革」の本気度
1月28日の「懇談」に先立ち、昨年12月22日、十河清副知事は森田益子氏と議会棟で約1時間面談して同様の要望を受けています。これも「同和団体」としての扱いはせず、水面下での面談。1月10日には尾崎知事が解同市協の「荊冠旗開き」に出席するなど、このところ両者の接近ぶりが目立っています。
高知市労働事業協会は解同市協と表裏一体、まぎれもない「同和団体」であるにもかかわらず、県が自ら定めたルールを、知事や副知事という最高幹部からなし崩しにすることは、現場に与える影響は重大です。
1月28日の「懇談」では解同側から「こんな大勢のところではなく、もっとお互いに知恵を出し合わなければならない」、「具体的なことについてはもっと少人数で」という働きかけが相次ぎました。県は闇融資事件を風化させず前県政の県政改革を継承発展させていくため、県政改革の再総括を外部委員に依頼して報告をとりまとめ、具体案を今年3月県議会までに出すべく準備をすすめている真っ最中。今回の一連の対応は、今後の県政改革の方向性とは明らかに異なります。「同和団体」への厳正な対応を今後も貫けるのかどうか。尾崎知事の県政改革への「本気度」が問われます。
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高知市二葉町の日雇い雇用保険現金給付窓口 |
解同側は県に何を要望しているのでしょうか。1月28日の知事との面談では森田氏が長く話をしましたが、要領を得ず、県側も真意をはかりかねていました。森田氏と五島氏の話を総合すると、高知市労働事業協会に現在適用されている日雇い雇用保険印紙を扱う事業所(職安所長の認定が必要)を、国が縮小している(常用雇用にする目的で、一般雇用保険への切り替えを指導をしている)ことに対し、不況下では「日雇い」のメリットがあるので、日雇い適用事業所を拡大すべきであるという趣旨の発言を繰り返していました。この背景には、昨年秋から厚生労働省との間で高知市労働事業協会などの日雇い雇用のあり方について、摩擦が強まっていることがあると考えられます。
県雇用労働政策課では「(事業協会側は)事業所が負担する雇用保険印紙代の負担を県に求めているのかもしれないが、そうであればそれはできない。この日の話では要求が判然としなかったので、確認している」としています。
■「また変なことになってはいけない」
森田氏は尾崎知事に対し「闇融資事件には責任を感じている。お詫びする。これを契機に胸を開いてほしい。高知市とは長い付き合いだが、今の時期、県にも知恵を出してもらいたい。(県連は)県との窓をちっともよう開けん。法は切れても差別は残っていることを自覚してもらいたい」。
十河副知事には「おまんほんまに最賃額を知らざったがか(副知事が12月22日の面談で最低賃金額を間違ったことから)。おーの困った。この男はこれで底辺の苦しみが分かるろうかと、あては腹が立った。岡崎高知市長は知恵を出してくれている。大蔵省と地方のケースワーカーの知恵は違う。連携をとって、ええかよ、これはおまんに頼んじょくぞ、おまんは介良の大金持ちの坊ちゃんじゃと聞いたぞ・・・」
この発言には尾崎知事がたまりかね、「ここは対話の場。一方的にづき(批判)まくられたらいかん。また変なことになったらいきません。対話ということを第一にお願いしたい」と森田氏をたしなめる一幕もありました。
高知市労働事業協会(森田益子顧問、山崎誠躬理事長) 社団法人格を取得しており、 定款で「同和地区をはじめとする地域住民の職業、就業に関する対策を協議し、(略)早期に部落の完全解放を成し遂げることを目的」としている。住所は解同市協と同じ高知市朝倉己771−9、事務所のフロアも同一でまったく区別はつかず、完全に表裏一体の関係。
※1 同和行政の一環として協業組合「モード・アバンセ」に高度化資金14億円余を融資したが詐取され、倒産回避のために県が議会に隠し、担保もとらず、別予算を流用して異例の直貸しで密かに12億円余を融資し約30億円の損害がでた事件。背景には解同に屈服した歪んだ県同和行政があった。当事の副知事が特別背任罪で有罪判決を受けた。
※2 報道機関への公開、内容のホームページでの公表、人数は20人以下、2時間以内とする。平成13年9月10日決定。(2009年2月8日 高知民報) |