2008年11月23日

貧困と学力の相関顕著 就学援助率高いほど正答率は低く 高知市立中学校 家計支援する施策は急務 
就学援助率と正答率の関係(高知市教委が公表した平成20年度調査結果から高知民報社が作成)
全国学力学習状況調査の結果から、経済力の低い家庭の生徒は「学力」が低くなり、将来の貧困が固定化する懸念があるということが各種報道や識者から指摘されていますが、高知市教育委員会が公表した資料からも、就学援助を受けている家庭の多い学校の正答率が低くなる結果が出ており、家庭の収入と学力に深い相関関係があることが示されました(別図参照)。

とりわけ高知市の場合に特徴的だったのが、中学生になってからの落ち込みでした。

高知市教委が公表した平成20年度調査のデータにもとづく「箱ひげ図」によると、高知市の小学6年生の場合には、就学援助受給家庭の割合が高い学校であっても、正答率は全国平均を上回る学校が多くあるなど有意な差は認められません。

しかし、中学3年生になると、受給世帯の割合が高い学校の正答率の落ち込みが顕著に見られるようになります。

高知市立中学校の就学援助受給率は3割台(平成19年度33・57%)であり、グラフでも市内校の分布は20%から50%の間に集中していますが、県平均よりも正答率が落ちこんでいる学校が多く、かつ全国の同様の就学援助率の学校のグループ内で比較しても高知市の中学校が低位に位置していることが分かります。

この結果から高知市では、小学生のうちは家庭に経済的困難があっても学力への影響を大きくは受けていないものの、中学生になると通塾の有無、思春期特有の非行問題など生徒の学習環境が家庭の経済力に大きく左右されるため、経済的に苦しい家庭により多くの困難が生じていることが如実にあらわれています。

高知県の生徒の学力を向上させていくことを考えた時に、経済的に困難を抱える家庭への支援策を強めることの重要性を示しているといえますが、現実には高知市教委は来年度に向け就学援助制度の切り下げを検討。また県教委は遠距離通学をいっそう拡大させる普通高校の通学区域を撤廃する方向を打ち出しているなど、経済的に困難な家庭の生徒が等しく教育を受けることがさらに困難な状態が拡大していく施策がすすめられようとしています。

※グラフの箱の部分が全体的に右肩下がりになっていることは、就学援助率の高い学校ほど正答率の低い傾向が全国的に現れていることを示している。グラフ中高知市の学校分布で一部、小規模な学校で属人的な影響が極めて強いと思われる値が出ている部分は例外的なものとして除外して考えている。(2008年11月23日 高知民報)