2008年11月9日

原発見学が福祉体験? 大月町社協 大月中生徒ら37人 学校が参加者募集 
原発見学に参加した生徒の感想文の掲載した「社協だより」
幡多郡大月町の大月町社会福祉協議会が、同町内の小中高生を対象に「福祉体験学習(ワーク・キャンプ)」と称して愛媛県の伊方原子力発電所を見学させるツアーに取り組んでいたことがこのほど分かりました。「高知民報10月26日号で県内工業高校が授業で原発見学をしていることを報じましたが、原子力発電や高レベル放射性廃棄物への抵抗感を薄めさせる一方的な宣伝が、児童生徒をターゲットに県内各地で広がっていることが明らかになりました。

この「福祉体験学習」が実施されたのは本年7月29、30日。大月中学校生15人、宿毛高校大月分校生4人をはじめとする生徒と関係者の合計37人が、伊方原子力発電所(西宇和郡伊方町)と原子力保安研修所 (松山市湊町)を見学し、松山市内のホテルに宿泊しています。交通費やホテル代、食事代などの参加者負担はゼロ。四国電力の原発広報予算と同社協の予算ですべての費用がまかなわれています。

なぜ原発見学が「福祉体験学習」になるのか。

同社協が発行した「社協だより」2008年9月1日号によると「私たちの毎日の生活から切り離すことのできない電気や医療に欠かせない、原子力関係の学習をするとともに、『命の大切さ』、職員のチームワークの大切さ」を学ぶため」。例年の「福祉体験学習」では、生徒に福祉ボランティアを体験させるため町内の在宅要介護者をヘルパーと同行して訪ねたり、施設の見学を実施していましたが、「今年は少し趣向を変えようということになった」(同町社協関係者)。原発見学が 「福祉体験」というのはいかにもミスマッチですが、同社協ではこれまでにも社協職員や役員、老人クラブ、民生委員などで同様の原発見学に取り組んできた前例があることから、さしたる抵抗感がなかったものと思われます。

今回の原発見学ツアーの参加者の中心は大月中の生徒で、募集は校長を通じて行われています。同中への取材では「うちの中学から20人くらい行っているはず。例年はボランティア活動をやっていたが、なぜ原発になったのかといういきさつは分からない。社協からきた文書を校内に掲示して参加者を募集した」。

前述の「社協だより」9月1日号には原発見学に参加した女子生徒の「原子力発電の良さ」と題した感想文が掲載されていました。
要旨は「伊方原発の見学に行って考えが変わった。二酸化炭素が出ない、少ない燃料でたくさん電気を作れる、燃料をリサイクルでき、今の時代に良いことばかりだ。特に燃料が再利用可能というのにはとてもびっくりした。原子力発電の燃料の96%は再利用でき、廃棄物も少なくなる。また原子力発電の安全性がすごかった。思っていたよりも厳重だった。止める、冷やす、閉じこめるの考えを聞いて少し安心した。原子力発電に反対だったけど今では原子力発電はすごいなーと感心する」というようなものものです。見学の際に、四国電力側が、児童生徒に原発の安全性、再処理やプルサーマル発電など核燃料サイクルについて重点的に説明していることが分かります。

解説 原子力発電やプルサーマルなど課題が山積し、国民世論が真っ向から対立している問題について、判断力の乏しい児童生徒に一方的な電力会社のプロパガンダを注入するツアーを、社会福祉協議会という極めて公共的な性格の高い団体が実施し、学校が生徒を集めるなどということは福祉や教育のあり方からの逸脱です。とりわけ公教育を担う学校が電力会社の原発の宣伝広報に手を貸すことは許されませんが、学校にその意識は希薄。事実関係を確認した取材に対して管理職は「それが何か問題ありますか」という反応でした。同町では2002年に使用済み核燃料中間貯蔵施設誘致が山本有二・自民党衆議院議員を介して浮上。当時、柴岡邦男町長は「誘致は考えていない」と否定しましたが、依然として水面下では動きがあることが今回の大月町社協の動きからも読みとれます。(2008年11月9日 高知民報)