2008年10月16日

エネ庁全国キャラバン「放射性廃棄物と地層処分」 パネル討論の要旨 
パネル討論では地層処分の必要性が強調された(10月8日、かるぽーと)
10月8日にかるぽーと小ホールで開かれた全国エネキャラバン(資源エネルギー庁主催、高知新聞・高知放送後援)でのパネル討論の要旨を紹介します(敬称略)

コーディネーター遠山仁(高知新聞論説副委員長) 高知新聞社の遠山です。原子力発電についてどんな感想、疑問を持っていますか?

川村育子(RKCラジオパーソナリティ) ハイオク車をハイブリッド車に替えようと思っている。CO2、地球環境のことなどに関心持つようになってきた。電気のゴミについて最近まで知らなかった。日本の電力の3割が原子力発電だが、高レベル放射性廃棄物と言われると怖い響きがある。なぜ地層処分なのか、大丈夫なのかという疑問が残るが、今日の説明で原子燃料のリサイクルの仕組みや基本的な方針は理解できた。

遠山 高レベル放射性廃棄物の地層処分について心配なところはあるか。

川村 スウェーデンでは直接処分をしているが、今回のガラス固化体とどっちが安全なのかという疑問をもつ。

朽山修(原子力安全研究協会処分システム安全研究所長) スウェーデンやアメリカではそのままの使用済み燃料を処分している。日本はウランとプルトニウムを取り出したあと、残ったものをガラスに固めて捨てる。日本はなるべく廃棄物を少なくしようとしている、体積も3分の1になる。そのまま捨てた場合も安全性に大差はない。

遠山 地層処分は各国が採用しているわけだが、よりすぐれた処分方法はないのか。

朽山 いろいろな方法が検討されたが、これが世界的な選択となっている。利益を得た我々の世代できちんと処分するという考え方だ。

遠山 安全性が大きな問題だと思うが、気になる点は?

川村 大規模な地震、輸送中、建設中の安全の問題はどうなるのか。

朽山 処分したあとの安全性は議論になるが、輸送中のことはあまり議論されない。しかし輸送する時は、非常に危ないので、頑丈な容器に入れて輸送するなど、きちんとやっていく。

遠山 大規模な地震には大丈夫なのか?活断層は?

朽山 M8の地震に対してのシミューションをやらなければいけない。300メートルより深いところに坑道を掘るが、500メートルや1000メートルの深さにに空洞を作ると岩盤の圧力がかかってくることを考慮して、安全な空洞を作って作業ができるかどうかを確かめる。埋めた後に地震がきても、あまり大きな被害はでないといわれているが、いろんな力学的計算をして確かめていく。見つかっていない活断層はたくさんあるが、処分場そのものを横切るような活断層でなければ問題ない。十分な調査をする。概要調査でダメな所はダメだ。OKなら地下に施設を作り精密調査をして、安全を確認してから実際の作業に入る。

遠山 渡辺さん、補足は?

渡辺厚夫(資源エネルギー庁放射性廃棄物等対策室長)
 日本で一番心配しているのは地震、活断層だと思う。地震の揺れは地下が深いと揺れない。処分場を決める前には詳細な調査を行う。

朽山 それでも活断層を見落とすかもしれないので、ガラス固化体を厚さ19センチの鉄で被い、厚さ70センチの粘土で覆う。活断層が横切ったときでもガラス固化体が破壊されることはないことをNUMOが調べている。壊れた時のシュミレーションもある。破局的なことにはならないということを確かめながらやろうとしている。

遠山 分かりました。次に地層処分の立地場所の選定に話を移す。高知県は東洋町で大きな混乱が起きて、今なおその影響は残っている。最も責任を持っている国として東洋町の問題をどう総括しているのか?

渡辺 振り返ってみると、電気を使ったらゴミが出る、ゴミを処分する必要がある、処分問題が伴っているということについてみなさんに伝えきれていなかった。当たり前のように電気を使っているが、発電すればゴミが出る。電気を使っている以上、ゴミの処理は他人ごとではない。国民一人ひとりが考えなければいけない問題があるということを伝えきれていなかった。本当に安全な処分ができるのかということについても、十分伝えきれていなかった。高知県はもちろん、高知県以外でも全国的に国民に伝えきれていなかった。温暖化、省エネ、リサイクルについてみんな自分の問題として取り組んでいる。電気のゴミの問題も、同様に他人事ではなく直視をというところを、こういった機会をいただきながら、NUMOや電力会社と連携して広く伝えていく。

遠山 高知に住む一人として、東洋町の問題をどんな感じで受け止めましたか。

川村 情報が少ない中で、短期に押し進められていくのではないかという危機感をみなさんが持ったと思う。真っ黒なイメージのものが、押し寄せてくるような気持ちになったのではないか。あの時点では知らないことのほうが多かった。あれをきっかけに電気のゴミの存在を理解しようといという気になった。

遠山 高知県各地の状況を見ると、立地場所の選定は、まだまだ困難が予想されるが、国はどう取り組むのか。国が前面に出るという方針に見直されているが、改めて聞く。

渡辺 国が前面にたっていかなければならない課題であるというのが基本的な考え方。そういう中で、このような形での説明会を、それぞれの都道府県でやっている。できるだけ多くの方々にお伝えする取り組み、地域のNPOとも連携しながら、ワークショップで1日かけてディスカッションしていく活動もしている。地下の処分の実際を体感してもらう設備も用意するとか、いろんな形で実際に見てもらう機会を増やしたい。これまでNUMOが公募していたが、公募に加えて、実際に関心を持っている市町村について、国から申し入れしていくことも追加した。この中で処分事業についてはやくめどを付けたい。

遠山 国民の理解を広げていくための取り組みというところで、こんなことをやったらどうかというのがあるか?

川村 知ってから、意見を持つことが大事。こういう場所に集まる人は限られている。NUMOのPRはテレビで見るが、たとえば電気製品を買ったときに、電気のゴミが出るというリーフレットを入れる、キャラクターをつくる、日々頭にいれておく生活環境づくりというのはどうか。

渡辺 地球温暖化、ゴミのリサイクルは、日常会話の中でも出てくるようになっている。日常の中で目に触れるような機会が増えるような工夫をやっていく必要がある。

朽山 立地場所をNUMOが公募しているが、処分場を作って終わりまで100年かかる。地域とNUMOがパートナーでやっていかなければならない。国民全体が出した廃棄物をある一箇所でやってもらうおうとしているので、その人たちに感謝しなければならない。地域の人も国民全部のためになる仕事をする。薄汚い仕事ではない。環境をきちんと守ろうという仕事だ。他の人は感謝して、その地域がその仕事で栄えていくのは一番よい形だから、NUMOが札びらを持っていって引き受けてもらうということではない。事業のパートナーを公募しているということを、もっと前に出してやっていくのがいいのではないか。

遠山 会場からの質問について回答する時間にする。地下水について、水はつながっているので大丈夫なのかと心配するのは当然だ。

朽山 雨が土の中をしみこんでいくと、深くなってくると非常に強い岩盤に出会う。水が通りにくくなり、水が貯まる。処分するところはそこよりも低く、何百万年より古い地層、実際には岩盤だ。岩盤をくりぬいてトンネルをほっていく。そこの地下水は岩と岩の間の隙間にずっとじっとしてる。坑道をくりぬくと、そこに水が出てくる。作業中に出てくるの水はとめながらやらなければならないし、閉じたあとの地下水の流れも十分みなければならないが、そこの地下水は1万年以上前の水。1年間に数ミリの速さで動く。やるときには候補地の周りの広域の調査をして地下水流をきちんと調べる。

遠山 地下水に漏れ出すとどうなるのか。

朽山 粘土の中にを水がしみこんでも、19センチのオーバーパック(鉄)は酸素がほとんどないので腐食しない。それでも腐食するかもしれないが、間違いなく1000年は持つように作ってある。その後はガラスを少しずつ溶かすが、ガラス固化体を全部溶かすに数万年かかるという計算になっている。溶けた放射性物質が地下水にのってじわじわ出てくるが、水と反応して酸化物になって岩石のようなものになってそこに沈殿してじっとしている。なかなか出てくるというわけにはいかない。ほとんど流れてこない。それでも何十万年か先にはひょっとしたら計算では出てくるかもしれない。それは自然からうけている放射線のレベルからいえばはるかに低く問題はない。作業中の問題は、工学的な対処で能動的に管理することで避けられることがほとんどだが、風評被害は残念ながら避けることができない。「嘘なんだから」ではいけない。引き受けたおかげで風評被害が出てくることに対しては、どのような対処をしていくか考えなければならない。地域とNUMOは一緒に風評被害の解決をして、十分な対処をしなければいいパートナーシップはつくれない。

遠山 何か付け加えることは? 

渡辺 風評被害などのリスクを、お互いに理解を深め合っていく。国やNUMOがみなさんの関心について説明してお互い理解をしていくことが風評被害を避けることにつながる。

遠山
 最後に何か。

川村 原子力発電が始まってからゴミの問題は発生しはじめていた。現実に今あるものなので、最良の方法で処分できるように、私たちがまず理解していくことだと思う。何百年かけてどうなっていくのか、今はまず知ること。日頃から台所のゴミと同じように、電気のゴミを出しているという理解をもちたい。それが電気を使っている日本の役目でもある。

朽山 地層処分は原子力発電とセットになっている。これからどんどん資源がなくなっていく。廃棄物は出てくる、どう対処していくのかを考えなければいなけい。CO2が温暖化の原因になっているのかもしれない。CO2を避けなければいけない。火力発電で100万キロワット発電すると1年間で500万トンのCO2が出る。1人あたり5トン。これを減らすときに、ある程度の文明生活を維持していく、だんだんエネルギーを減らしていくにしても急激にはできない。その時に原子力を使えば、500万トンのCO2の代わりに30本のガラス固化体ができる。15トン、一人当たり15グラム。これを人間が隔離して閉じ込めておける廃棄物にする。CO2をこんなに出すよりいいだろうと選んだ廃棄物だから、それを何とかしようという話だ。ゴミがいやでどっかにもっていってくれと言っても、持っていってくれるものではない。なんとかしないといけない。地層処分は今の地点で唯一の解決策だ。怪しげな話ではないということを考えていただきたい。

渡辺 日本が置かれたエネルギーの状況が出発点。自給率が非常に低い日本が、将来にわたってエネルギーをどう確保していくのかを考える必要がある。

遠山 ありがとうございました。私たちの生活、経済活動が一定原子力発電に頼らざるをえない現状からいって、高レベル放射性廃棄物の問題は避けて通れない。国民全体で考えていく。地方の人間としては大消費地である大都市のみなさんにも考えてほしいし、地方の人間も自分自身の問題として考えていく必要があると改めて感じた。(2008年10月16日 高知民報)