2008年10月5日

特定同和団体が使い続ける根拠どこに? 県立人権啓発センター 「目的外使用」
(上)県立人権啓発センター(4、5.6階)の使用状況、(下)数年後移転が予定されている県情報政策課
県有施設である県立人権啓発センター(本町4丁目1番37号、4、5、6階部分のみ)の4階部分に、部落解放同盟高知県連合会(野島達雄委員長)、部落解放高知県企業連合会(企業連、解放同盟系)という特定2団体が1983年の同センター開設以来、今日まで25年間、入居し使用を続けている問題を前週に続きレポートします。

同センター4階の特定2団体による使用状況は、解同県連が今年6月まで3部屋で約111平方メートル(33坪)、6月以降は解同側から1部屋返上の申し入れがあったため2部屋約71平方メートル(21坪)に。企業連が1部屋79平方メートル(23坪)を使っています。

解同らの使用状況は同センターが完成した83年以降、基本的に変っていません。83年当時は4階に解同ら2団体、5階は全日本同和会(その後、全日本自由同和会、現在は自由同和会に改称)県本部が使用しており、排除された全国部落解放運動連合会(現在は全国地域人権運動総連合へ改称)は、特定団体だけの優先使用に強く反発していました。

01年6月に5階の全自同県本部が退去し、その後は図書室として県民に活用されていますが、4階は25年前とほとんど変らない状況が今日も続いています。
 
解同県連らが県に支払っている「家賃」、使用料はどうなっているのでしょうか。行政財産を「目的外使用」させる場合には、所定の使用料を徴収することが原則とされていますが、建物の場合の使用料は、立地や周辺の地価とは無関係で、財産台帳上の価格から一律に割り出されることから、県庁本庁舎すぐ近くという同センターの好立地条件にもかかわらず、市価の相場よりも相当安い使用料しか徴収しないことになります。詳細を見てみます。

月額使用料坪1635円


現在、解同県連が支払っている使用料は月額約3万5000円(坪単価約1635円)、この他エレベータ使用料や共益費であるガス、水道、共用電気料など月額5万円程度を支払っていると思われます。企業連の使用料は月額約3万9000円。他にエレーベーター代と共益費が月額5万円程度。

これを周辺の貸しビルと比べてみます。労働金庫本店などが入る「こうち勤労センター」(本町4丁目1番32号)5階に入っている県商工労働部県産品ブランド課の加志崎万蔵課長によると「電気や水道代を除いて家賃は月額29万7965円。面積は106・2平方メートル(32坪)なので坪当たり9000円くらいになる。このあたりの相場は坪1万円から1万2000円くらいなので安いほうだと思う」。

「高知電気ビル」(本町4丁目1番16号)6階に入る県政策企画部情報政策課(180平方メートル、55坪)の家賃は月額54万円(坪単価9960円)。他に清掃代、空調代、共益費などが月額14万5000円程度。

このように解同県連らの負担は、近隣の民間ビルと比べて共益費など比較の複雑さを考慮しても半額以下の破格の安値。実態的には県から特定団体への隠れた補助金としての性格を帯びます(県は平成14年度から、それまでの使用料の2分の1減免はやめている)。解同県連は選挙では民主党候補を推薦し、地方議会に組織内候補を送り込む活動に取り組み、昨年の知事選挙では尾崎正直・現県知事を推薦するなど、政治的な活動も日常的に行っています。県有財産をこのような団体に恒常的に使用させることは、行政の政治的中立をも危うくさせるものではないでしょうか。

使用是非、真剣な検討されず

9月12日、解放同盟側の見解を聞くために同センター4階の県連事務所と企業連事務所を訪問して、「目的外使用をいつまで続けるのか。解同市協のように自前で事務所を構える計画はないのか」と質問したところ、解同県連・企業連とも「そのような計画はない。従来どおり。答える必要はないので帰ってもらいたい」という回答が戻ってきました。

県立人権啓発センターは県民共有の財産であり、県自身が人権問題については同和問題だけではなく幅広い人権課題(女性、障害者、外国人、高齢者、子ども、HIV感染者等)を取り組んでいく方針を持っています。特定の同和団体だけが既得権のように、いつまでも県立の施設を使い続けることは、県行政に求められているセンター活用のあり方とはかけ離れています。

一方、県情報政策課は毎年800万円以上の県費を支払い「高知電気ビル」に入っているものの、耐震工事実施によって、数年後に立ち退かなければならない可能性が大。現状では代替スペースのあてもありません。また県庁本庁のスペース、周辺の会議室も不足しているのが現状です。

県がすすめていく「人権啓発」にふさわしい施設利用の方法、県有財産をトータルに有効活用していく方策を真剣に再検討すべき時期に来ているのではないでしょうか。過去の県同和行政に精通している県幹部は非公式であると断りながら「県が解同の言いなりになっているわけでは全然ない。ただ、県人権啓発センターの施設のあり方について、真剣に検討を加えたことは正直ない。過去の経過がそのままきているだけだと思う」と話しました。(2008年10月5日 高知民報)