2008年9月21日

学区制は現状維持で 「県子連」が県教育長に申し入れ
学区制の現状維持を求めた県子連の申し入れ(9月10日、県庁西庁舎)
9月10日、子どもと教育を守る県連絡会(徳平時代表)が、中沢卓史・県教育長に行った、県立高校の学区制撤廃に反対する申し入れの要旨を紹介します。(−−は連絡会側のメンバー)

−−年内に(学区撤廃の)結論を出すというが、大事な問題は、もっと研究し、県下隅々の保護者の意見を聞いて検討すべきだ。学区をなくして学力があがると本当に考えているのか。高知市の子どもが市外通学によって意欲をなくす。頑張れば希望が実現するというのは言葉だけだ。

中沢卓史・県教育長 そういう側面もあるだろう。制度を決めていく時には、それぞれのメリット、デメリットがいずれにしてもある。どちらを大事に思って制度をやっていくか、これから議論していく。通学費増などのデメリットは分かるが、実際には大半の学校の通学区域はすでに撤廃されている。今でも高い通学費を払っている人がいる。学区の撤廃により負担増になるところにどう対応したらよいかという課題意識をもっている。

−−たびたび制度を変えるべきではない。

中沢 制度は安定しているほうが望ましいが、世の中どんどん変わっている。修正・改善していかなければならない。

−−はじめに結論ありきだ。第1回の会議のあいさつで、教育次長が学テの平均が低いので、その対策として入試のあり方を考える必要があり、学区制が行きたい学校選びの障害になっていると言っている。「変えてほしい」という事務局の方向性が先にある。その通りに報告がまとまるのは当たり前だ。

中沢 県教委から「変えてくれ、撤廃してくれと」言った訳ではない。現在の状況を話し、議論をお願いした。学区撤廃については、引き続き検討することに2007年1月の報告書でもなっている。

−−「学力向上・いじめ問題等対策計画」にも学区制見直しは入っている。撤廃が既定路線としてあって検討委員会に諮問したのではないか。

中沢 (学区制が)今のままでいいのか、全国的にも撤廃するところが増えている。そういう問題意識、学力向上を考えた時、ひとつの仕組みという考えを、県教委はある面持っているが、それは検討委員会で議論してもらい、それを踏まえて進めなければならない。

−−高知市教委の反対について。

中沢 市内の中学生が市外通学しなければならなくなること、進学率を心配してのことだと受け止めているが、高知市が設置している高知商業には学区がない。60%くらいが市外から通学しているが、これは論理矛盾ではないか。高知市教委とは話をしていきたい。

−−報告にあるメリット・デメリットの中身が、何も実証されていない主観的観測だ。学区を撤廃すると「行きたい学校にむけて努力するようになる」とあるが、どこで実証されているのか。そんなに簡単なことなら先生は何の苦労もない。 デメリットに学区を残すと高知市内の子供に安易に高校に進学できるイメージを与え、学習意欲を低下させるとある。どこで証明されているのか。まったくの素人考えだ。「保護者の経済的負担が増すことも考えられる」とある。簡単に書いているが、学費や通学費は本当に大変。高校に入るとお金がかかる。クラブ活動費、修学旅行代も高い。新婦人県本部が全県から集めた教育費のアンケートで仁淀川町から21通の回答があったが、授業料以外で何が大変かとの問いに18人が通学費と答えていた。月に15000〜4万円払って佐川高校に通っている。学区がなくなれば淘汰される学校が出てくる。統廃合されると、地元の学校に通えなくなる。本当に生活が大変なので、遠距離通学が増えるのは心配だ。県教委に通学費を援助してほしい。

中沢 遠距離の通学費は授業料より高いということはある。どういう対応をしたらよいか、すでに大部分が学区が撤廃されており、現実に今通っている人がいる。それにプラスして、撤廃によって遠距離通学者が今より増える。これをどう考えるのか、大きな課題だ。

−−検討委員会の子供を見る目線がメリットばかりに寄っている。上ばかり見ているのが気になる。デメリットを受けるのも高知県の子供だ。教育長はすでに6割が市外から来ているというが、家庭は本当に大変だ。あとの人も何とかやるだろうというような考えではなく、高知県全体の子供をぜひ見てほしい。年内に結論を出すというのは、急ぎすぎだ。急ぐ理由は何なのか。

中沢 制度を変えるということであれば、検討委員会に諮問して報告書が出たからには、速やかに結論を出すのが普通の仕事の仕方だ。

−−年内に一定の結論を出すというのは、学テ対策からきているのではないか。急展開している。なぜこれまで学区について慎重な論議をしてきたのか。デメリットのことを考えてのことだ。多少のことは仕方がないという見切り発車では、とばっちりは子供にくる。デメリットを補完する手立てがなければ発車すべきでない。デメリットを補完する見通しはあるのか。

中沢 今の制度でもデメリットはある。最終的にはどっちにしても、すべてがうまくいくことはない。デメリットをできるだけ補完することを考えなければならないが、完璧にできるのかと言えば一般的には難しいのが、今の世の中だ。

−−デメリットがあるのに、学テのために撤廃を急ぐのか。

中沢 学テのために学区を撤廃するわけではないが、ひとつの側面としてはある。

−−報告書に書かれているメリットは、一定以上「できる子」、家庭的に恵まれている子のメリットだ。逆に言えばすべてデメリットにつながる。学校がなくなれば地域の学校に行けなくなる。教育長が一定水準以上の子どもしか目を付けていないとしたら大変残念だ。(2008年9月21日 高知民報)