|
高知県立高校での授業料免除者数の推移 |
経済的に困難な家庭の生徒の県立高校授業料を免除する制度(※1)の利用者がこの5年間で急増しています(県教委調べ、別表参照)。2008年度途中の集計で免除者は10・7%。県立高校生の10人に1人が授業料免除者という実態は、県民生活の急速な悪化の現れ。経済的困難を抱える家庭の生徒の学習を保障するために年々高騰する教育費(※2)をどう低減していくのか、通学費負担が増加する「学区撤廃」についても、授業料免除者に現れている県民の生活実態から慎重に扱うことが重要になっています。
県下の授業料免除者は01年は4%台でしたが、年々増加し07年度には10%を突破。08年度は年度途中の集計ですでに10・7%に達しています。 県教育委員会高等学校課では「家計急変や災害などまだ増える要素があるので、年度末には11%をこえるのではないか」。免除者の実数は08年度1665人。01年の875人から右肩上がりで増え続け、2倍化しています。
■「学区撤廃」の影響
県教委は、県立高校の通学区域を撤廃し「全県1区」へ踏み出す方向で準備をすすめていますが、通学区域が撤廃された場合に、遠距離通学をせざるをえない生徒が増え、通学費負担はより深刻に。経済的理由で高校教育が受けられないという事態も考えられます。
中沢卓史・県教育長は今年6月県議会で高知市内から周辺部に通学する場合の通学費について、香美市土佐山田が月額7200円、土佐市高岡は月額25000円の負担が見込まれると答弁していますが、遠距離通学は家計を直撃します。教委長は「経済的理由で進学を断念するようなことがあってはならず、そのために授業料免除や奨学金がある」とも述べましたが、月額9900円の授業料が免除されたとしても、高額な通学費を支払うのは困難を極め、将来の先行きが不透明な中で高校生に借金を負わせる奨学金の利用には保護者が二の足を踏むのが当然です。
授業料免除者の急増に見られる県民生活の急速な悪化の中で、高校教育を保障していくためには、誰もが無理なく通える地元の高校を各地域に残していくことが大切ではないでしょうか。
吉岡太史・県高教組書記長の話 学区を撤廃して「行きたい学校」を選べるのは一部の生徒でしかないことがこのデータからは読み取れる。学区を撤廃するというのであれば遠距離通学生徒の通学費の保障を合わせて考えなければならない。また学力と家庭の経済状況とは密接な関係があり、学力保障を考えていく時には、学校の中だけでなく経済や福祉的な要素とあわせて正面から議論していかなければならない。
※1 学習意欲がある生徒で、@生活保護世帯、A児童養護施設入居者、B市町村民税非課税世帯で学費支払いが困難と認められる場合、C災害で自宅が損壊、Dその他家計が急変した時など、県教委が認めた場合に授業料の全額または半額を免除する制度。
※2 全日制高校の授業料は年額11万5200円だが、この他に入学時に制服、教科書、体操服などで10万円以上必要。またPTAなどの各種費用、修学旅行費用、模試費用など年間数万円が引き落とされる。(2008年9月7日 高知民報) |