|
23年度廃止にむけて準備がすすめらている雇用促進住宅高知宿舎(高知市十津) |
独立行政法人「雇用・能力開発機構」が、公共職業安定所の紹介等による就職者の住宅確保を図ることなどを目的に設置した雇用促進住宅(※)を、政府の15年後までの全廃方針決定を受けて、県内でも住宅廃止にむけた動きを表面化させています。
※現在、全国に約14万戸、約35万人が居住。高知県内には@安芸市宝永町80戸、A高知市十津80戸、B須崎市多ノ郷80戸、C四万十市佐岡80戸、D四万十市楠島80戸、E宿毛市西町80戸、合計480戸の住宅がある。
■一方的な廃止案内
高知市十津の住宅では6月上旬、「入居者への皆様へ」と題した文書が入居者に配布されました。事前の説明がまったくない中で、一方的に廃止をすすめることを通告する内容であり、住民の中には不安が高まっています。
独立行政法人雇用・能力開発機構高知センター総務課長・大西利夫氏によると、文書の配布は住宅の管理を委託している財団法人「雇用促進協会」の先走りであるとの説明があり、「一方的に文書が配られたことには、我々も驚いている。しっかり説明しなければならないが、廃止方針は閣議決定されておりどうすることもできない。居住者をそのままに市へ譲渡できれば最も影響が少ない。売価となる鑑定価格が8月に出るので、自治体との話をつめていく」
十津の住宅の廃止期限は平成23年度末。それまでに自治体が買い取らなければ、民間への売却を検討し、それでもダメなら解体して更地にして売却するという方針ですが、民間への売却の現実的可能性は乏しく、自治体が購入しなければ解体処分されることが考えられます。
「機構」の自治体への売却方針に対して、廃止によってさらなる人口流出を懸念する過疎地の自治体からは、買取に積極的な姿勢が示されていますが、一方で高知市は、買収には極めて消極的な姿勢です。
高知市のある幹部職員は「国が廃止を決めた住宅を自治体に買い取れというのはお門違い。国の責任でフォローすべきだ。市が買い取っても耐震、エレベーターがないなど、すぐに多額の改修費がかかることに加え、市営住宅にするのであれば、入居者は白紙にして改めて市の基準で公募しなければならない。特定の入居者付きで市営住宅にするというのは無理があり、市民に説明ができない」。
このように自治体によって買取へのスタンスは分かれます。買取に積極的な自治体への国の財政支援策、また買い取ることができない住宅では一方的な廃止の中止をはじめ、国の責任において入居者の居住権を守ることが重要になってきます。
問題をさらに複雑にさせているのが入居者の権利関係。平成15年以降の入居者は、2年間の期限付きの契約となっているため機構側が契約更新をしなければ契約は打ち切られてしまうことになります。
一方で15年以前からの入居者は旧借地借家法による期限の定めのない通常契約となっているため、機構側が一方的に契約を解除することはできません。旧法による居住者が、本格的に対抗手段をとることになると、強制的な立ち退きを求めることは困難を極め、問題長期化も予想されます。
現在は、住民への説明も行われていない段階であり、まずは国と「機構」が住民に納得いくまで説明し、一方的な廃止ではなく、居住者の権利をしっかり守る対応が求められています。(2008年8月10日 高知民報)
|