2008年8月10日
コラム「アンテナ」 県議会は自ら調査公表を 教員合否通知問題
記者会見にのぞむ中沢県教育長(7月23日)
大分県で大問題になった教員採用試験や管理職登用に関しての不正・汚職事件を受けて、高知県教委の状況について報告する会見が7月23日に開かれた。

中沢卓史・県教育長の報告の基調は、高知県教委は、試験問題や解答の開示などが全国有数の透明度の高さであると胸をはるものであったが、この県教委の認識は間違っていない。県民の目線で取り組んできた「土佐の教育改革」の最大の成果のひとつであると思われるが、ただよく腹に入れておかなければならないのは、県教委自らの取り組みで自動的に透明度が上がってきたわけではないということである。

採用審査問題の開示をめぐっては1990年代後半、県教組がバックアップした情報開示を求める裁判闘争があった。県教委は「問題を公開すると問題作成者の負担が増し、選考審査に支障が生じる」と頑なに公開を拒否していたが、最高裁に県教委の上告が棄却されるかたちで敗訴し、法的な決着がついたことから、いわば不本意に、しぶしぶ開示する方針へと転換したのが事実経過である。

県民の運動が裁判を提起したことが、ある意味で高知県教委を「救った」わけで、教育に限らず行政をチェックし監視していく県民の運動のレベルの重要性を痛感させる出来事であった。

また、この日の会見では、行政職の歴代教育次長を中心に、一部県議から事前に特定の教員採用審査受験者の受験番号や氏名を聞かされ、その合否の結果を特別に通知することを依頼されるということが、なかば常態化していたことが明らかにされた。

県議への連絡はインターネットなどで正式に結果が公表された後のことであり、それで合否の判断が左右されたとは思わないが、発表の直前に立ち話で結果通知を依頼されたケースもあれば、試験日あたりから長時間かけて通知を依頼された事例もあるという。後者などどう考えても、特定受験者と県議のつながりのアピールでしかなく、実質的には口効きそのもの。極めて問題がある。当然「職務に関する働きかけ」として記載すべき事柄であるように思うが、現実にはその記載はまったくなかった。

なぜこのようなことが起きるのかとの問いに中沢教育長は「県議との軋轢を避けようとする役人の弱い心だろう」と述べ、「採用審査にかかわる者に、採用の決定の前に名前や受験番号が知らされることは、審査する者がプレッシャーを感じないとも限らない。極めて不適切であり、今後は一切そのようなことはしない」と断言した。

ただ平成15年以降の合否結果は、受験番号だけしか公開されていないことから、県議に氏名も含めて通知したようなケースは、個人情報などの守秘すべき情報の漏洩になるのではないかとの問いには、中沢県教育長はぐっと詰まり、「微妙なところだ。そこまで想定していなかった。よく考えてみたい」と言うにとどまるなど、県議との関係では後味の悪さも残った。

県教委にはこの機に採用審査のさらなる透明性の向上と、高知県の教育に本当に必要な人材を確保できる審査へと改善をはかっていってもらいたい。県議会としても不適切行為の当事者としての自覚があるならば、議会自らの責任として、どの議員がどのような関与をしていたのかを自ら調査して県民に報告すべきではないか。簡単なことである。グズグズ言う議員がいるなら、高知県議会が得意な「百条委」にすればよい。執行部にはやたらと厳しいが、自分たちには大甘では、県議会へ県民の信頼は得られない。(2008年8月10日 高知民報)