2008年7月10日

「全員の合意はできない 見切りをさせてもらう」 吉川教育長 潮江東小給食調理民間委託 
給食民営化方針を説明する吉川教育長(7月9日、潮江東小学校)
高知市教育委員会が財政難を理由に導入を計画している学校給食調理業務民間委託の平成21年4月試行の唯一の対象校になっている潮江東小学校で7月9日、同小の保護者(1、2年)に対して吉川明男教育長が説明を行い、この中で吉川教育長は「全員の合意ができるとは思っていない。やるだけのことをやって、見切らせてもらう」と発言しました。市教委が同校保護者に民営化方針を初めて正式に伝えた説明会は6月中旬。この日の説明会はまだ2度目で、保護者の議論は始まったばかりにもかかわらず、早々と「見切り発車」を宣言しました。(他学年の説明会も順次開く予定)

吉川教育長のこの発言の背景には、保護者の中に根強い不安感があることに加え、9月定例市議会で予算措置を議決しなければ、今後のすべてのスケジュールに狂いが生じるという事情があります。

19時から20時30分までの予定で同校体育館で開かれた説明会では、7月7日に岡山県の小学校の調理現場を見学(保護者の参加は5人)したビデオの上映や説明で約1時間が費やされ、質疑応答の時間は30分ほど(時間が足りなくなったため30分間延長した)。市教委は「民間に委託すれば調理員の人数が増えるのでゆとりができる」、「民間業者はクリスマスにはサンタのエプロンをするなどの工夫をしている」などと民間に委託したほうが給食の質が向上し、まったく心配はないという説明を繰り返しました。

2年生の児童の母親は「もっと考える時間がほしい。教育長が保護者の意見を聞くつもりなどないということがよく分かり、がっかりした。まるで9月議会に間に合わすためのアリバイのようだ」と話していました。

吉川教育長の発言から

なぜ横浜新町をやめたのか、何か後ろ暗いところがあるのかという声があるが、とんでもない。鷹匠庁舎から近く、市議会で反対する議員もいたので、丁寧な試行をするためだ。

なぜ地域に説明をしないのかというチラシが出ているが、給食を食べるのは子供。なぜしなければならないのか。必要ない。まずは保護者だ。

保護者全員の合意がないと試行しないのか。そんなことはない、責任を持って試行をやらせてもらう。その前段に説明会をやり意を尽くし、合意を得るために全力を尽くす。ただ全所帯にいちいち賛否をとって合意形成ができるとは思っていない。やるだけのことをやって、自分の責務を考え、見切りをさせてもらう。

潮江東小の校長が前教育次長なので、民営化と人事が連動しているという憶測を聞いたことがあるが、心外だ。

保護者との主なやりとり

○食中毒が発生した時、責任の所在はどうなるのか。 

市教委 業者に過失があれば業者に責任がかかってくる。保険に入っているかを確認して業者を選定する。

○人件費が削られ、働く人がパートタイマーになると一人一人は一生懸命やると思うが、先々どうなるのかが不安がある。比べるのであれば今の高知市の調理現場と、委託を想定している業者を比べるべきではないか。

市教委 民間委託のほうが人数が増えるのでゆったりとやっている。国の基準があるので衛生管理は心配ない。心配がある業者は絶対入れない。事故があれば業者もつぶれるので必死でやるはずだ。

○民営化により残食が減るなど、子供にとってのメリットはあるのか。

市教委 今、潮江東の残食は多い。調理は民間に任せてもっと学校栄養職員が児童の前に出ることで残食も減らせる。全国展開している民間企業のマニュアルは非常にきちんとしている。

○民間委託の良い話ばかりするが、デメリットの情報はないのか。

市教委
 実施した市に何度も聞いているが本当に出てこない。2年前に実施した日高養護学校でも「まったく問題ない」ということだった、問題があればこれほど全国の自治体には増えない。

○もろ手を挙げて民間委託をすすめるという話だが、そんなに良いものなら、なぜ試行検証などといって一本釣りするのか。もっと多くの学校で試行すればよい。なぜ横浜新町小をやめるなど弱気なのか分からない。なぜこの学校の保護者の意見だけで高知市全体の方向性を決めなければいけないのか。教育長は最初に「ある程度で見切りをつけると言った」。もう潮江東でやることは決まっていて保護者に説明した形をつくるだけのパフォーマンスではないか。意見を言う気がそがれる。

市教委 反対があろうと一気に導入する強引なやりかたもあるが、子供の口に入るものであり、試行してきちっと検証したい。この場は我々が説明責任を果たす場であると同時に、保護者の意見を聞いて少しでも不安を払拭するための場だ。(2008年7月10日 高知民報)