2008年7月10日

公立学校耐震化工事 IS値0・3未満の県単補助廃止へ 中澤高知県教育長 
中澤卓史・高知県教育長は、市町村が実施する公立小中学校耐震工事に対する高知県単独の補助制度「公立小中学校耐震化促進事業補助金」を、倒壊の可能性が高いIS値0・3未満の施設について国の財政支援がかさ上げされたことを契機に県単分を廃止することを明らかにしました。7月10日の県議会7月定例会で自民党・溝渕健夫議員の質問に答えたもの。

中澤教育長の答弁要旨は以下。

本年6月に法改正がされ、IS値0・3未満の公立小中学校の耐震補強や改築について国庫補助率のかさ上げなど財政支援措置が講じられたが、3年間の時限措置となっている。本県の倒壊する危険が高い校舎は150棟と推計されるが、耐震技術を有する業者が限られ、工事が夏休みに集中することから、3年ですべての工事を終えることは容易ではないが、市町村には国の補助が充実したこの機をとらえて耐震化に早急に取り組んでほしいと強く要請していく。

公立小中の耐震化は、これまで国の財政支援が十分でなかったため、県単の継ぎ足し補助を行うと同時に、国に対して財政支援の充実を要望してきたが、国の財政支援が充実されたので、この際、県と市町村の役割分担をトータルに見直すことにした。0・3未満の施設は国の補助率のかさ上げにより、県単を廃止したとしても市町村の財政負担は軽減されることから県単は廃止する。一方、0・3以上の施設については従来どおり県単補助を継続し、引き続き支援していく。

耐震診断さえ行われていない公立小中学校が数多く残されていることから、耐震化を促進するためにも、市町村が行う耐震診断への財政支援措置の充実を検討している。

中澤教育長は本会議終了後、取材に答え、「県は高校の耐震化もやらなければならない。今まで財政が厳しい中でも無理をして県単の継ぎ足しをやりながら、国に支援の充実を要望してきた。これが認められて国の制度が良くなったのだから、この分は許してくださいということだ」。また市町村から現行制度の維持について強い要望が出ていたことについては「0・3以上についてはそのまま残すが、国の制度が拡充した分については要望には添えない。ただ一方では耐震診断については加速するように県としても支援する方向で考える」と述べました。

県庁内の議論の過程では、県教委は当初IS値0・3未満への県単補助の存続を求める立場でしたが、財政当局との間で議論した結果、国の支援策が「拡充」した中で、県が撤退しなければ、国から引きだせるはずの交付税を、県が肩代わりすることになってしまうという整理で、撤退が決まりました。

実際には耐震工事にかかる実工事費と、国が定める補助対象基準額(この額に対して改築3分の2、補強2分の1)の間に、大きなかい離があるという重大問題が何ら解決していないままであることから、国の補助率が上がったからといって、市町村が取り組む耐震化工事が急速にすすむような状況ではありません。このような中で県教委が耐震化が最も急がれるIS値0・3未満施設への補助から撤退することは、一刻も早く耐震化をすすめなければならない市町村からみれば納得しがたいのも現実。ある市の担当者は「耐震診断を拡充するというが、我々の求めているものとは違う。残念だ」と話しました。

耐震診断への補助拡充については、現在ある県単の補助制度のまま補助対象を拡大するなどしても、県単が引き上げられた分、国からの補助が減り、市町村にメリットがさほどないということも考えられ、このことを中澤教育長に指摘したところ「その問題意識はある。市町村にメリットがないようなことはしても意味はない。思い切ったことをしたいという思いは持っている」と回答しました。(2008年7月10日 高知民報)